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遡及修正が実務上不可能な場合ー平成24年3月期事例

経営財務3085号(2012年10月15日号)のミニファイルで「実務上不可能な場合」という記事が掲載されていました。その記事によると、「24年3月期では,上場2,486社のうち4社(5件)が原則的取扱いが実務上不可能な旨を開示していた。」ということで、その4社(なお、1社はアプライドが同記事で紹介されており、以前の記事でいなげやについては取り上げられていました。)を探してみました。なお、結果的には、以下の通り7社の事例が見つかりました。

1.いなげや

いなげやについては、”遡及修正の原則的取扱いが実務上不可能な開示例ー平成24年3月期いなげや”というエントリで書いているので詳細は割愛しますが、要約すると、棚卸資産の評価方法を変更したものの前期分のデータがないので遡及修正は実務上不可能であるとしている事例です。

2.アプライド

上記のエントリを書いた際には、棚卸資産の評価方法を変更した会社としてひっかかりませんでしたが、この会社も棚卸資産の評価方法の変更絡みです。売価還元原価法から先入先出法に変更した子会社が存在し、先入先出法を遡って適用するためのデータが存在しないため、遡及修正は実務上不可能としている事例です。実際の開示は以下のようになっています。

【会計方針の変更】
(たな卸資産の評価方法の変更)
当社グループにおける商品及び製品の評価方法については、従来、当社及び株式会社コムロードを除いた連結子会社は先入先出法、株式会社コムロードは売価還元法を採用しておりましたが、当連結会計年度から主として先入先出法に変更しております。
これは、購買業務の合理化のために、株式会社コムロードがパソコン事業の店舗業務をPOSを含めて当社と同一のシステムへ移行したことに伴い、同事業では、当社と同一の評価方法を採用することが可能となったことによるものであります。
当該会計方針の変更は、上記のシステム移行に伴うものであり、株式会社コムロードでは先入先出法を算定するために必要なデータが保存されていないことから、遡及適用の原則的な取扱が実務上不可能であります。このため、前連結会計年度末の商品及び製品の帳簿価額を当連結会計年度の期首残高として、期首から将来にわたって先入先出法を適用しております。
これによる、連結財務諸表に与える影響は軽微であります。

3.東理ホールディングス

これまた、棚卸資産の評価方法の変更絡みです(前回は何を検索したのだろうか・・・)。事業の種類別に売価還元原価法から総平均法への変更と最終仕入原価法から総平均法への変更が行われています。これもシステムを整備したものの前期分はデータがないので遡及修正が実務上不可能としています。実際の開示例は以下のようになっています。

(会計方針の変更)
ダイカスト事業のたな卸資産の評価方法は従来、製品及び仕掛品は売価還元法を採用しておりましたが、当連結会計年度から総平均法に変更しました。この変更は、コンピューターシステムの整備が完了したことに伴い、製品別の製造原価を正確に把握し、適切な期間損益を算定することを目的に当連結会計年度から原価計算制度を導入したことによるものであります。
当該会計方針の変更は、当第4四半期連結会計期間に新原価管理システムが本稼動したことから、過去の連結会計年度に関する製品及び仕掛品の受払記録が入手不可能であり、この会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を前連結会計年度の期首時点において算定することは実務上不可能であります。そのため、前連結会計年度末の製品及び仕掛品の帳簿価額を当連結会計年度の期首残高として、期首から将来にわたり総平均法を適用しております。その結果、従来の方法と比べて、製品は6,695千円増加し、仕掛品は81,141千円減少し、売上原価は74,445千円増加し、売上総利益及び経常利益は同額それぞれ減少し、営業損失及び税金等調整前当期純損失は同額それぞれ増加し、少数株主損益調整前当期純損失及び当期純損失が74,445千円増加しております。
 当連結会計年度の連結キャッシュ・フロー計算書は、税金等調整前当期純損失が74,445千円増加し、たな卸資産増減額が74,445千円減少しております。
 当連結会計年度の1株当たり純資産は0.8円減少し、1株当たり当期純損失金額は0.8円増加しております。

(中略)

(会計方針の変更)

食品流通事業のたな卸資産の評価方法は従来、最終仕入原価法による原価法を採用しておりましたが、当連結会計年度より総平均法による原価法に変更しました。この変更により商品原価を把握し、適切な期間損益を算定することを目的にしております。
当該会計方針の変更は、当第4四半期連結会計期間から新在庫システムが本稼動したことから、過去の連結会計年度に関する商品の受払記録が入手不可能であり、この会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を前連結会計年度の期首時点において算定することは実務上不可能であります。そのため、前連結会計年度末の商品の帳簿価額を当連結会計年度の期首残高として、期首から将来にわたり総平均法を適用しております。その結果、従来の方法と比べて、商品は1,709千円増加、売上原価は1,709千円減少し、売上総利益及び経常利益は同額それぞれ増加し、営業損失及び税金等調整前当期純損失は同額それぞれ減少しており、少数株主損益調整前当期純損失及び当期純損失が1,709千円減少しております。
当連結会計年度の連結キャッシュ・フロー計算書は、税金等調整前当期純損失1,709千円減少し、たな卸資産増減額が1,709千円増加しております。
 当連結会計年度の1株当たり純資産は0.02円増加し、1株当たり当期純損失金額は0.02円減少しております。

4.鬼怒川ゴム工業

これはなかなか面白い事例です。在外子会社の収益及び費用の換算方法をCRからARに変更して10年前までさかのぼって遡及修正していますが、帳簿の保存期間の関係からそれ以上遡れないので「実務上不可能」としている事例です。通常、過去の資料は法定の保存期間ないしプラス数年で廃棄されてしまうと思いますので、この理屈でいうと基本的に遡及修正は「実務上不可能」となってしまう気がします。実際の開示例は以下の通りです。

【会計方針の変更】
従来、在外連結子会社等の収益及び費用は決算日の直物為替相場により円貨に換算しておりましたが、在外連結子会社等の重要性が増加傾向にあり、また、一定期間の収益及び費用を換算するにあたり、一時点の為替相場を用いるより期中平均相場を用いることがより適正な情報開示に資すると判断したため、当連結会計年度より、期中平均相場により円貨に換算する方法に変更しております。
なお、当社における決算書類等の文書保存期間は10年と規定されているため遡及適用に係る原則的な取扱いが実務上不可能であることから、平成13年4月1日より期中平均相場により円貨に換算する方法を適用しております。
当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度については遡及適用後の連結財務諸表となっております。
この結果、遡及適用を行う前と比べて、前連結会計年度の営業利益は99,819千円、経常利益は98,514千円、税金等調整前当期純利益は98,131千円それぞれ増加しております。また、純資産の前期首残高の影響は軽微であります。

5.帝国通信工業

これは、棚卸資産の評価方法の変更によるものです。前述の事例と同様、システムの整備が行われて今期から総平均法が可能となったが前期以前のデータはないので遡及修正は「実務上不可能」としているものです。実際の開示例は以下の通りです。

【会計方針の変更】
 (たな卸資産の評価方法の変更)
当社及び国内連結子会社における製品の評価方法は、従来、主として売価還元法によっておりましたが、新在庫管理システムが完成・本稼働し、製品の受払管理に基づく原価計算がシステム化されたことに伴い、より合理的な製品の評価及び適正な期間損益の計算が可能になったため、当連結会計年度から主として総平均法に変更いたしました。
当連結会計年度の期首に新在庫管理システムが本稼働したことから、過去の連結会計年度に関する製品の受払記録が一部入手不可能であり、この会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を前連結会計年度の期首時点において算定することは実務上不可能であります。そのため、当該会計方針の変更は、総平均法に基づく当連結会計年度の期首の製品の帳簿価額と、前連結会計年度の期末における製品の帳簿価額の差額を元に算定した累積的影響額を、当連結会計年度の期首残高に反映しております。
なお、当該変更による製品、売上原価、各段階損益及びキャッシュ・フロー並びに1株当たり情報への影響額は僅少であります。
また、当連結会計年度の期首の純資産の帳簿価額に反映された会計方針の変更の累積的影響額も僅少であります。

6.チノー

これも、棚卸資産の評価方法の変更によるものです。まずは、実際の開示例です。

(会計方針の変更)
 当社における、原材料の評価方法は、従来、先入先出法によっておりましたが、当連結会計年度より移動平均法に変更しております。これは、生産管理システムの見直しを契機に、リアルタイムで原価管理を実施、また価格変動による損益計算書への影響を平準化することにより、より適正なたな卸資産の評価及び期間損益の計算を行うことが目的であります。
 当該会計方針の変更は、前連結会計年度まで原材料の評価方法について先入先出法を採用しており、システムで保存している単価記録は順次更新され移動平均法による単価情報の入手は実務上不可能なため、前連結会計年度末の原材料の帳簿価額を当連結会計年度の期首残高として、期首から将来にわたり移動平均法を適用しております。
 これによる、当連結会計年度の営業利益、経常利益及び税金等調整前当期純利益に与える影響は軽微であります。 

これもなかなか貴重な事例です。他の会社の棚卸資産の評価方法の変更は、売価還元法や最終仕入原価法から他の評価方法への変更なので、なんとなく以前のデータがないというのも納得できますが、この会社の場合は先入先出法から移動平均法なので、普通に考えるとデータはありそうな気がしてなりません。ところが、「システムで保存している単価記録は順次更新され」てしまうため以前のデータはないということで、「実務上不可能」ということになっています。書いてあるので事実そうなのだと思いますが、それで監査できるのかな?というのが疑問です。紙に打ち出されているということなのでしょうか・・・

7.フォーバルテレコム

最後に表示方法の変更について「実務上不可能」としている事例です。開示は以下のようになっています。

【表示方法の変更】
(貸借対照表)
 従来、債権譲渡取引にかかる債権については「売掛金」に含めて計上しておりましたが、当該取引の実態をより適切に反映させるため、当事業年度末より「その他」に含めて計上しております。
 なお、システムで保存している過去の情報が順次更新されており、情報の入手が実務上不可能であるため、過去の財務諸表については組替えを行っておりません。

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