閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

株主総会議長が拍手しない場合、賛成の議決権数への加算が一般的?

1か月ほど前に”株主総会参加者の議案への賛否を総会検査役がビデオ判定ー大戸屋HD”で、株主総会に参加した株主が議案に対する賛成の意を拍手をすることによって示さなかったことで、賛成票にカウントされなかったという件をとりあげましたが、株主総会での拍手を巡って裁判で争われた事案がT&A master No.842のスコープで取り上げられていました。

舞台は東証1部上場のJPホールディングスの臨時株主総会で、この臨時株主総会における議決権行使の取扱いに違法行為があったとして、同社の筆頭株主(原告)が同社の元代表取締役(被告)に対して損害賠償を求めていた事件で、東京地裁で2020年3月11日に判決が下されました。

具体的には、「平成30年3月23日に開催されたJPホールディングスの臨時株主総会において、被告を同社の取締役から解任する議案に賛成する株主に拍手を求める方法によって行われた採決の際に、被告が賛否未確認と扱ったことが違法行為に当たるか争われたもの」という事案です。この臨時株主総会では、被告を取締役から解任する株主提案がなされており、「最初は被告が議長となり総会の議事が進められたが、出席株主から解任対象となっている被告が議長を務めることは相当でないとして議長の交代を求める動議が提出され、原告代表者が議長になった。裁決では、原告代表者が議案に賛成する株主に拍手を求めたが、議長を務めていた原告代表者は裁決の際に拍手をしなかった。」とのことです。これにより、被告は原告を賛否未確認と取り扱い、この取扱いが違法行為にあたるのかで争われたとされています。

なお、原告が拍手をしなかった理由については、「事前に議決権行使をしていることから、あえて同一内容の議決権行使を済度する必要はないとの判断から拍手をしなかったなどと主張していた」とのことです。

結論として、東京地裁は、原告の請求をすべて斥ける判決を下したとのことです。ただし、議長は拍手しなくても賛成の議決権数に加算するのが一般的な取扱いであるとしたとのことです。記事のタイトルに「賛成の議決権数の加算が一般的取扱いも・・・」というように記載されていたので、この間の大戸屋HDのケースと違うのではないか気になりましたが、今回の事案は議長が拍手しない場合の取扱いということでした。

真面目に考えたことがありませんでしたが、上場会社の株主総会において、議長を務める代表取締役が大株主であるというケースは散見されますが、裁決を求める議長が率先して賛成の意を拍手することで示しているのは見たことがありません。しかしながら、会社法上、電子投票制度及び書面等制度はいずれも「株主総会に出席しない株主」(会社法298条1項3号、4号)が議決権を行使することができる制度であるから、事前の議決権行使及び議決権行使書面は、行使後株主総会に出席した場合にはその時点で無効となると解されていることから、議案に賛成する株主に拍手を求める形で採決する場合、株主総会会場にいる役員も本来、拍手をしなければ賛成数にカウントされないということになってしまいます。

しかしながら、自分たちが提出した議案に対し、総会会場で率先して拍手することなどするはずもなく、それ故「株主総会の実務上、議長は拍手をしなくても賛成の議決権数に加算するのが一般的」というのはそのとおりだと考えられます。この事案上、「議長は」となっていますが、総会に参加している会社側の役員は、内紛で明確に反対の立場を表明しているケース以外は、みな同様の取扱いとなっていると考えられます。

なお、事前の議決権行使や議決権行使書面で賛否を明らかにしているのであれば、拍手云々でなくても事前に表明した賛否で判断するのが妥当なのではないかとも考えられますが、この点については、株主総会に参加し、そこでの審議や質疑応答を経て最終的に議案の賛否が変化する可能性があるから、、事前の議決権行使や議決権行使書面での賛否で判断するということは妥当ではないということになるようです。

そうであるとすると、この事案では、臨時株主総会の途中で交代して議長についた原告の議決権は賛成数にカウントされてもよさそうですが、以下の理由から、被告による意思決定が民法709条の不法行為責任を基礎付けるほどの違法性を有する行為又は会社法429条1河野「役員等がその職務を行うについて悪意または重大な過失があったとき」に当たるとまでは認めがたいとして損賠賠償請求を棄却したとのことです。

  1. 原告代表者は、株主総会開会後閉会に至るまで議案に賛成する意思を対外的に表明しておらず、採決の際に拍手もしていないところ、当該行為を法的にどのように評価するかは解釈が分かれ得る問題であること
  2. 被告は、本件会社の顧問弁護士の見解に基づいて本件意思決定を行っていること
  3. 仮に、原告の議決権行使の結果を賛成の議決権数に算入したとしても、本件議案に賛成した株主の議決権の割合は、約60%にとどまり、出席株主の議決権の3分の2以上という本件議案の可決のための特別多数には達していない

原告の票を賛成票と取り扱うのが一般的と考えられるものの、専門家の意見を聞いて判断している上、賛成票として取り扱われていたとしても結果に変化はなかったことを考慮すると、損害賠償を認めるほどのものではないということでしょう。

株主総会の拍手は、ほとんどの場合、形式的な儀礼にすぎませんが、重要な意味を持つ場合があるということで注意が必要です。

関連記事

  1. 会社法改正の議論がスタート

  2. 議決権行使結果の個別開示を要請-改訂版スチュワードシップ・コード…

  3. 有報と事業報告記載の一体化に向けた留意点(その2)

  4. 株主総会の基準日変更-今年は0社(全株懇調査)

  5. 会計限定の監査役登記の登録免許税は1万円に落ち着くようです

  6. 「会社法制(企業統治関係)の見直しに関する中間試案」を確認(最終…




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,838,776 アクセス
ページ上部へ戻る