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役員等の責任限定契約を再確認

前回の記事に関連し、今回は会社法における役員等の責任限定契約について改めて確認してみることとしました。

会社法では、一定の要件のもと役員等との間の契約によって、任務懈怠責任をあらかじめ一定額に限定することを認めています。ここで、「役員等」とは業務執行取締役等を除く取締役、会計参与、監査役又は会計監査人(条文ではこれらをまとめて「日業務執行取締役等」としています)を意味します。

契約があればどんな責任でも制限できるわけではなく、責任を制限できるのは、役員等が職務を行うについて善意かつ無重過失である場合に限られます(会社法427条1項)。たとえば、セイクレスト事件(大阪高判平成27・5・21)では、監査役に任務懈怠があると認められたものの、重過失はないとして責任限定契約の適用が認められています。

何らかの問題が生じた場合に過失があるとして、それが単なる過失にとどまるのか重過失にあたるのかの判断は簡単ではないと思いますが、とりあえず人並みに職務を遂行しているということであれば責任限定契約に救われるということも十分に考えられます。

ただし、善意かつ無重過失の場合であったとしても、責任限定契約によって責任を免除するということはできず、役員等の地位に応じて、最低責任限度額が設けられています。これは、責任を完全に免除してしまうと善管注意義務を果たして職務を遂行しなくなる可能性があるためとされています。

①代表取締役…報酬の6年分
②代表取締役以外の業務執行取締役…報酬の4年分
③上記以外の取締役、会計参与、監査役または会計監査人…報酬の2年分

<定款の定め>
責任限定契約を締結するには、前提として「定款で定めた額の範囲内であらかじめ株式会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を非業務執行取締役等と締結することができる旨」を定款に定めておく必要があります(会社法427条1項)。

したがって、定款に定めがない場合は、株主総会の特別決議によって定款変更を行う必要があります。なお、監査役会設置会社では、取締役(監査等委員を除く)と責任限定契約を締結できる旨の定款変更議案を株主総会に提出するには、監査等委員の全員の同意が必要とされています(会社法427条3項)。

<登記>
責任限定契約の定款の定めについては登記が必要とされていますので、登記も忘れずに行うように注意が必要です。登記は、定款変更の効力が生じた日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局に申請するものとされています。

<上場会社における最近の事例>
2021年7月28日に京極運輸商事株式会社が社外取締役、社外監査役と責任限定契約を締結した旨の適時開示を行っています。

同社は2021年6月29日に開催された定時株主総会で、定款変更の決議を行ったうえで、社外取締役および社外監査役と責任限定契約を締結しています。これに関連する定款の定めは以下のように記載されています(Edinet 添付書類より)。

(取締役の責任免除)
第24条 当会社は、会社法第426条第1項の規定により、取締役会の決議によって、取締役(取締役であった者を含む。)の同法第423条1項の損害賠償責任を法令の限度において免除することができる。
② 当会社は、会社法第427条第1項の規定により、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)との間に、同第法423条1項の損害賠償責任を限定する契約を締結することができる。
ただし、当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、法令で定める額とする。
(監査役の責任免除)
第34条 当会社は、会社法第426条第1項の規定により、取締役会の決議によって、監査役(監査役であった者を含む。)の同法第423条1項の損害賠償責任を法令の限度において免除することができる。
② 当会社は、会社法第427条第1項の規定により、監査役との間に、同法第423条1項の損害賠償責任を限定する契約を締結することができる。ただし、当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、法令で定める額とする。

上記のような変更および責任限定契約を締結する理由としては、「監査役として適切な人材を確保し、期待される役割を十分に発揮できるよう」にするためなどとされています。

上場会社において社外役員に対して責任限定契約が締結されているのは珍しくありませんが、そのための定款変更議案に対する株主の反応はどうなのかについて、議決権行使の状況を確認したところ、賛成割合は99.95%で剰余金処分の99.91%よりも高い割合となっていました。株主からすると、責任限定契約を締結することによって会社の経営にプラスとなる有能な社外役員を集めやすくなるのであれば反対する理由はないということのようです。

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