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平成30年3月期の有価証券報告書作成に係る主な改正点(その2)

前回に引き続き、2018年3月期の有価証券報告書作成に係る主な改正点としてASBJのセミナーで取り上げられていた事項についてです。前回は経理の状況以下の改正点について取り上げたので、今回はそれ以外の部分について確認します。

経理の状況以外については、ディスクロージャーワーキング・グループ報告の提言を踏まえた改正となっており、以下の項目が改正されています(一部、経理の状況にも影響あり)。

  • 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
  • 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
  • ストックオプション制度の内容
  • ライツプランの内容
  • その他の新株予約権等の状況
  • 所有者別状況
  • 大株主の状況
  • 議決権の状況
  • 役員・従業員株式所有制度の内容
  • コーポレート・ガバナンスの状況
  • ストック・オプション等関係
  • 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

    これは、法令等の改正ではなくASBJの有価証券報告書の作成要領で記載されている「作成上のポイント」の改正となっています。
    第二号様式記載上の注記(30)aでは「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、その内容について記載すること」とされていますが、ASBJの作成要領の「作成に当たってのポイント」では、以下の記載を追加する改正が行われています。

    なお、会社が独自に設定設定した指標を記載する場合、指標の内容に加えて、例えば、なぜその指標を利用するのかについての説明、一般的に用いられている指標との差異等について、具体的に記載することが求められるものと考えられます。

    経営方針の記載は昨年、短信の改正にあわせて有報に記載することとされたもので、「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合」の記載は昨年から求められているわけですが、ASBJとして記載が不十分なものが多いと感じたということかもしれません。

    事例をいくつか確認してみると、「経営上の目標状況を判断するための客観的な指標等」として「売上高経常利益率○%の達成に努めてまいります。」とか「ROE(自己資本利益率)○%以上を目標としています」、あるいは具体的な数値目標は明示せず、売上高成長率、売上高経常利益率、自己資本利益率等の指標を述べて目標とする経営指標とする旨を記載している事例が普通で、なぜその指標なのかを記載している事例は少ないように見受けられます(選択理由が全く記載がないことも珍しくなく、記載されていても「経営の効率性と収益性」というようなものであることが多い)。

    では、IRの評価が高い会社ではどのような開示を行っているのかですが、日本IR協議会のIR優良企業大賞(2017年度)を受賞した小松製作所と塩野義製薬では以下のような開示が行われていました。

    ①小松製作所(2017年3月期 有価証券報告書)

    ②塩野義製薬(2017年3月期 有価証券報告書)

    ■2020年に向けた基本戦略
    当社を取り巻く環境変化に柔軟に対応しながらこれまで積み残してきた課題を解決し、当社の基本方針である「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」ことを実現するため、2016年10月に中期経営計画SGS2020を更新いたしました。新たな目標設定に当たっては、「成長性」「効率性」「株主還元」の3つのフレームワークで目標を設定しております。
    成長性の目標としては、「新製品」を新たに定義しました。コア疾患領域の感染症、疼痛・神経を中心とするこれらの「新製品」に経営資源を集中させて製品価値を速やかに最大化し、社会に対して新たな価値を提供することを目指します。その結果として、2020年度の新製品売上高2,000億円、経常利益1,500億円を成長性の数値目標として掲げています。
    効率性の目標としては、経営管理能力とキャッシュ創出力の強化によりビジネスの効率性を上げるとともに、研究開発における自社オリジンの創薬と効率的かつ効果的な開発の追求を定めました。その結果、数値目標は、投下資本利益率(ROIC)13.5%以上、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)5.5ヵ月、自社創薬比率50%以上としています。
    株主還元の目標には引き続きROEとDOEを定め、株主還元、戦略的事業投資、成長への投資をバランスよく行い、企業価値を最大化してまいります。

    また、東証が2016年度「企業価値向上表彰」で大賞に選んだ花王では以下のような開示がなされています。

    ③花王(2017年12月期 有価証券報告書)

    (2)目標とする経営指標
    当社グループは、投下資本のコストを考慮した真の利益を表すEVAを経営の主指標としています。その本質は、株主等の資金提供者の視点を持って、資本を効率的に活用し利益を生み出すことにあります。EVAを継続的に増加させていくことが企業価値の増大につながり、株主だけでなく全てのステークホルダーの長期的な利益とも合致するものと考えています。そして事業規模の拡大を図りながら、EVAを増加させることを事業活動の目標としており、個別事業の評価、設備や買収などの投資評価、年度ごとの業績管理や報酬制度などに活用しています。

    記載上の注意では「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、その内容について記載すること」とされているだけですので、従来多くみられる記載がだめということないとは思いますが、上記三社のような記載が望まれるということのようです。

    2.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

    従来から【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】はありましたが、これに「経営者による」がついて【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】の記載が求められることとなりました。

    見かけ上は「経営者による」がついただけですが、従来の【業績等の概要】および【生産、受注及び販売の状況】が改正により【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】に含まれることとなっています。

    第2【事業の状況】の改正前後の項目を確認しておくと以下のようになっています。

    (改正
    1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
    2【事業等のリスク】
    3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
    4【経営上の重要な契約等】
    5【研究開発所活動】

    (改正
    1【業績等の概要】
    2【生産、受注及び販売の状況】
    3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
    4【事業等のリスク】
    5【経営上の重要な契約等】
    6【研究開発所活動】
    7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

    改正前の1・2・7が改正後の3に統合された形ですが、記載順も変更されています。

    具体的な記載内容として、経営成績、財政状態、キャッシュ・フローの状況、生産、受注及び販売の実績については従来と同様の記載となるようですが、これらに加えて「経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」の記載が新たに求められることとなっています。

    第二号様式記載上の注意(32)(e)では、以下のように記載されています。

    (e) 経営成績等の状況に関して、事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとに、経営者の視点による認識及び分析・検討内容(例えば、経営成績に重要な影響を与える要因についての分析)を記載すること。また、資本の財源及び資金の流動性に係る情報についても記載すること。なお、経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、当該経営方針・経営戦略等又は当該指標等に照らして経営成績等をどのように分析・検討しているのかを記載するなど、具体的に、かつ。わかりやすく記載すること

    「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」というわかりにくい表現が使われていますが、要は経営成績とキャッシュ・フローの状況を経営者としてどのようにとらえているかを記載することが求められているようです。

    ASBJの作成要領の記載例からすると、経営成績、財政状態、キャッシュ・フローの状況、生産、受注及び販売の実績については実績等の事実を記載し、「経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」で解釈を加えるというような関係にあると考えられます。

    ASBJの作成要領においては、「作成にあたってのポイント」として、以下が記載されています。

    ③「資本の財源及び資金の流動性に係る情報」の記載にあたっては、キャッシュ・フロー計算書の内容を単に要約したものを記載するのではなく、企業の経営内容に即して、例えば、重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等について、具体的に記載することが期待されています。

    あえて「キャッシュ・フロー計算書の内容を単に要約したものを記載するのではなく」と書かれてしまうと困りますが、とはいえ重要な資本的支出の予定がなければ何を記載するかは悩ましいところです。重要な資本的支出の予定がない旨を開示するということも考えられなくはないですが、キャッシュリッチな会社が「重要な資本的支出の予定はありません」などと記載すれば、投資家からは配当しろと言われるだけだと思われますので、「具体的に、かつ、分かりやすく記載すること」が求められていますが、こんなことに資金を使っていくという旨をやや大きく記載するということが考えられます。

    3.ストックオプション制度の内容

    これは従来「新株予約権等の状況」と「ストックオプション制度の内容」で記帳が重複していることが多かったことから、「新株予約権等の状況」にストックオプション制度の内容を記載を統合した形となっています。

    記載すべき項目については基本的に変更ありませんが、改正後の第二号様式記載上の注意(39)bにおいて、事業年度末日時点の状況と届出書提出日の属する月の前月末時点の状況を記載することとされています。従来から新株予約権等の状況の部分については、二時点の記載が求められていましたが、「ストックオプション制度の内容」としてはそのような要請はありませんでした。

    また、新株予約権の状況についても、従来は期末日時点と提出日前月末時点の2列で各項目の記載が行われていましたが、二時点において変更がない部分については、「ただし、届出書提出日の属する月の前月末現在において、記載すべき内容が、最近事業年度の末日における内容から変更がない場合には、その旨を記載することによって、届出書提出日の属する月の前月末現在に係る記載を省略することができる」とされていますので、脚注に「・・・その他の事項については当事業年度の末日における内容から変更はない」旨の記載をすることで、期末日と提出日の前月末の二つを一つにまとめて記載することが可能となります。

    そのため、ASBJの記載要領では、通常変動すると思われる「新株予約権の数(個)」および「新株予約権の目的となる株式の種類、内容及び数(株)」については「XXX[XXX]」というような記載例が示されており([ ]内が提出月の前月末時点)、その他の項目については一つにまとめられた記載となっています。

    上記のほか、ここで記載が求められる事項を経理の状況のストック・オプションに係る記載にまとめて記載することも認められており、その場合は、「①【ストックオプション制度の内容】」にその旨を記載することによって、当該注記において記載した事項の記載を省略することができるとされています。

    最後に、内容が類似した複数のストックオプションを発行している場合には、決議ごとに記載する方法のほかに、内容が類似した複数のストックオプション制度を集約して記載することができるとされています。

    4.ライツプランの内容/その他の新株予約権等の状況

    これらの項目については、ストックオプションと同様、新株予約権を複数回発行している場合において、類似した複数の新株予約権がある場合には、それらを集約して記載することが認められることとなっています。

    途中ですが長くなりましたので今回はここまでとします。

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