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ストーリーとしての競争戦略

「ストーリーとしての競争戦略」(楠木 建 著)という本を読みました。きっかけは、本屋で平積みにされていた、この本の帯に10万部突破「本格経営書として異例のベストセラー」とあって興味をひかれたことによります。

最近では「ストーリーのない商品は売れない」というような話も聞くので、プロジェクトXのような困難をいかに乗り越えて商品等を開発したかの感動ストーリーなのかと思っていましたが、その手の話ではなく、いい意味で期待を裏切られました。

筆者のいうストーリーとしての競争戦略とは、個々の打ち手ではなく、個々の打ち手が因果論理で縦横につながり、全体として他社との違いを作ろうとする戦略思考です。

このような筆者の主張するストーリーとしての競争戦略がよく考えられた事例として、マブチモーターやスターバックス、サウスウェスト航空、中古車買い取りのガリバーなど複数の事例が挙げられています。

個人的には、スターバックスコーヒーのファンなので、スターバックスの事例が面白く感じました。スターバックスについて書かれた書籍も多いので、有名な話なのかもしれませんが、スターバックスのコンセプトは「第三の場所」だそうです。
つまり職場でも家庭でもない「人々が安心して集える避難場所」にするというのがコンセプトで、そのコンセプトを実現するためのさまざまな打ち手について解説されていました。

頻度でいえばかなりの回数、スターバックスでコーヒーを飲んでいますが、確かにスターバックスでは、店舗が混んでいるので自主的に短時間で席を立つことはあっても、混んできたので席を空けるように言われたことも、飲み終わった容器をかたずけられて案に出ていけと言うような態度をとられたこともありません。
むしろ、PC用のコンセントが設置されている店舗が増えてきたりして、長い時間いることを前提に店舗が設計されていると思い当たります。
また、少し意外だったのは、スターバックスはフードにはそれほど力を入れていないという点です。 それなりに充実しているように思いますが、コーヒーの香りを損なわないことや時間がないときに「効率的な食事の場」として使用されてしまうのを避けたいためと解説されています。

コンセプトを実現するためのさまざまな打ち手が、一貫したストーリの下で連関しており、かつ筆者がいうところのキラーパスが組み込まれている必要があるとされています。筆者はスターバックスの場合、キラーパスは「直営方式」を採用していることとしています。
店舗数を拡大する場合、フランチャイズ方式を採用したほうがコスト負担が少なくスピードも速くなると考えられますが、フランチャイズ方式だとオーナーが利益の最大化を目指そうとすると、店舗が混雑している場合に客を追い出すような行動にでて「第三の場所」というコンセプトを達成できない可能性が高くなります。

確かに、フランチャイズ方式を採用しているコーヒー店では昼時の読書は御遠慮下さいというような張り紙が貼ってあったりして、ゆっくりくつろぐという感じでありません。

このような事例をふまえた解説がなされており、面白い本でした。筆者いわく、戦略を立案は本来楽しいものであるはずなのに、多くの会社で部分部分のアナリシスになってしまっているとのことです。確かに思い当たる節はあります。

いつか、これは面白いといわれる戦略を考えてみたいものです。

ストーリーとしての競争戦略―優れた戦略の条件

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