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オリンパス第三者委員会の報告書-監査法人の責任は(その1)?

リンパスの一件について第三者委員会の報告書が同社のHPに掲載されていました。要約版でも23ページに及ぶ内容ですが、とりあえず監査法人について述べられている部分に目を通しました。

今回は、前会計監査人の「あずさ監査法人」についてのみとしますが、同監査法人は1974年11月から2009年6月まで同社の監査を担当していました。

あずさ監査法人は1999年9月中間期における監査において「飛ばし」の一端を把握したとし、以下の内容が明らかにされています。
「あずさ監査法人は、1999年9月30日朝、オリンパスにおいて「飛ばし」が行われているとの情報に接した。その情報によれば山田及び森が関与しているとされ、関与金融機関名、金額なども明らかにされていて、確度の高いものと思われた。そこで、あずさ監査法人がオリンパスに赴いたところ、山田、森及び中塚の3名が対応した。山田らは当初否定していたが、執拗な質問の結果、「飛ばし」の事実を認めるに至った。それによると、外資系証券の関係者が関与するファンドに対し、特定金外信託の中の含み損を抱えた金融商品を当該信託の簿価で売却し、その代金を得たというものであった。」

上記で出てくる、「山田、森及び中塚」というのは、前常勤監査役の山田秀雄氏、前社長の森久志氏、現コーポレートセンター長の中塚誠氏のことで、山田氏および森氏は、損失繰延が発覚後役員を辞任しています。

なお、三者の関係ですが、1985年頃財テク路線へ突き進んだ時の、金融資産の運用をほぼ一手に引き受けていたのが経理部資金グループの係長であった前常勤監査役の山田秀雄氏、その後1987年に前社長の森久志氏が山田氏の部下になり、1988年に現コーポレートセンター長の中塚誠氏が経理部資金グループに配属され、以後運用業務は山田氏・森氏が主に行い、中塚氏がサポートするという体制が長く継続したそうです。

このような「飛ばし」は不正取引なので、あずさ監査法人は、直ちにこれを取り消し、オリンパスが取得した売買代金額と当該金融商品をファンドに戻すように要請したところ、当初会社は返金手続きを回避しようとしたところ、9月30日であったので同日中に処理が行われないと中間期の決算で指摘しなければならないと強く迫った結果、同日3時までに返金手続きを終え、不正取引は取り消されたと書かれています。
ここで問題となっていたほうが、オリンパス社にとってはよかったのかもしれませんが・・・

なお、返金した金額やファンドの情報などは保管期限を過ぎてしまっているため不明とされています。

このような事態が発覚後、あずさ監査法人は特定金外信託の評価方法と当時オリンパスが採用していたバスケット方式原価法からバスケット方式低価法に改めることを求め、会社もこれを受け入れたとされています。(金融商品会計基準適用前は、特定金外信託の評価方法としてはバスケット方式原価法も認められており、この方法によれば、全体を一つの銘柄とみなすため個別の銘柄で大きく損失が生じていても損失を計上する必要はなかった)。

さらに、特定金外信託と同様に不正の温床になりやすい通貨及び金利スワップ取引についてもオリンパスに解消を求め、オリンパスも2000年3月までこれら取引を解消することにしたとされています。

この結果、1999年9月中間期において、特定金外信託の解約損125億円、通貨スワップ及び金利スワップの解約損43億円が特別損失として計上されることになったとされています。

なお、実際には上記で損失計上をすることになった案件以外に、受け皿ファンドに譲渡された含み損を抱えた金融商品が数百億円規模で存在したわけですが、上記の「飛ばし」取引の前後においてされた売買取引についても、あずさ監査法人が精査したところ、それらがいずれも時価に近似した価額による売買であったことが判明したとされています。

そうだとすると、数百億円規模の含み損を抱えた金融商品が受け皿ファンドに移動するわけがないのですが、この点について同報告書では、「運用先からオリンパスが入手した「時価」情報が、実は時価でなく、時価に架空の価額を上乗せして簿価に近似させた価額だったのではないかという疑いが生ずる」としています。
そしてこの点について、「あずさ監査法人が入手した、特定金外信託に含まれる金融商品の時価情報が、いずれも信頼しうる金融機関が発行し、かつ書面によるものであったとしても、これをかいかぐるオリンパスによる巧妙な操作が施されていた可能性が高いといわざるを得ない」とし、「あずさ監査法人が「飛ばし」取引発見後に実施した監査については、上記認定の状況下にあっては、その責任を尽くしていないとは言い切れない」評価されています。

2001年3月期から2008年3月の監査については、コメルツ(2001年3月期のみ)、SG、LGT銀行に対する残高確認書について、回答案として担保の有無等を記載するものが付されていたが、先方からは残高のみを記載した残高確認書が送付されていたという点で手続きに問題があったとしています。

しかしながら、山田氏が中塚氏ほか担当者に対し、照会される金融機関に連絡して、監査法人からの残高照会については、担保等の照会に応ずる必要はないことを伝えるよう指示したこと、当時の外国銀行に対する残高照会の実務においては項目を網羅して記載を求めても、その全部についての回答が得られないことが頻繁にあったこと、残高の照会を受ける銀行の担当者は、通常、その預金の拘束の有無を承知していることから、残高の照会を受けた時、当該預金が担保に供されていればその情報も含めて回答しようと考えるはずなので再確認を行わなわなかったことが、損失分離スキームの長期にわたる隠蔽に寄与したとはいえないと考えられると評価されています。

そして問題の国内3社については当初の事業計画が高い成長を見込んでおり、経営環境の悪化から減損リスクが高いこと、ジャイラス社については、2008年3月期に50億円の追加報酬を支払っていることから、その内訳及び支払いの妥当性を検討する必要があるという問題意識をもって2009年3月期の監査に臨んだとされています。

この問題意識の下、2008年12月5日に当時専務取締役であった山田氏と、とりわけ国内3社に対する投資について取締役会での議論の必要性にまで踏み込んだ協議を行ったことを始め、2009年1月末には国内3社への往査を実施し、当該3社に関するオリンパス社の評価に強い懸念を表明、またジャイラス社のアドバイザリー手数料および優先株式の買取の双方の金額の妥当性について指摘し、株主代表訴訟の可能性まで言及したと報告されています。

その後2009年4月23日に、山田専務に対して監査への協力を依頼し、あずさ監査法人との会計処理の認識を一致させない状態で2009年5月12日に予定している決算短信発表を実施しないことを要請するとともに、状況によっては金商法第193条の3(法令違反等事実発見への対応)の発動もありうることを伝え、会計処理を正しく処理することは当然として、今後の調査の状況次第では、来期の監査継続ができなくなるおそれがあるという懸念を表明したとされています。
その後、菊川氏・山田氏・森氏と協議した結果、これら経営陣からあずさ監査法人の考え方に同調するような発言を受け、監査役会にも国内3社に対する投資やジャイラス社のアドバイザー手数料の妥当性について業務監査権限を行使するよう促したが、監査役会は取締役会の業務執行に問題はなかったとの結論を出したため、これを受け2009年3月期に無限定適正意見を表明するに至ったとされています。

そして、2009年5月21日に菊川氏と山田氏があずさ監査法人を訪れ、「監査人として再任しない」旨を一方的に伝えたそうです。

問題となっている「のれん」については、国内3社の株式取得の実態は先送りされた損失の補填するための資金循環取引にすぎないため、買収時点で「のれん」(2008年3月期545億円、2009年3月期136億円)の計上自体が認められないものと考えられるとしたうえで、2008年3月の監査で買収価格の異常性は指摘しているものの損失処理のスキームの実態を知らなかったことから「のれん」の計上を容認することとなったとしています。

報告書では、取引金額の異常性を考慮すれば、株式価値評価を行った会計事務所へのヒヤリング、本件国内3社の実態把握などの追加手続きを行うべきであったと評価していますが、国内3社の株式取得がオリンパスの決算月である2008年3月に実行されており、外形上は第三者と合意した価格での取引を装っているということ、翌期(2009年3月期)には追加的な監査手続きを実施し、超過収益力がなくなったとしてのれんの一括償却をオリンパスにせまり557億円の一括償却を実施しており、監査役会に「監査役職務執行に関連して特に重要と思われる事項」として、のれんの減損の必要性や取引金額の妥当性について報告を行い、上記を受けて監査役会は取締役の職務執行について外部調査を依頼し、FA報酬の支払いに関し取締役の違法もしくは不正な点があったとまで評価できるほどの事実は認識されていない旨の2009年委員会報告書を受領しているとのことなどの状況からすると2008年3月期にのれんが計上されたことについて監査法人の責任があるとまではいえないのではないかと思います。

ジャイラス社の「のれん」については、あずさ監査法人は、ワラントも含め245億円と高額なFA報酬の実態に疑念を抱いたため、同法人内のM&A専門家の見解も参考にして、ジャイラス買収価額の5%を超える部分155億円を前期損益修正損として費用処理するよう会社を指導したが、オリンパスは、あずさ監査法人の要求にかかわらずFA報酬額の詳細を開示しなかったとされています。

また、優先株の買取に関しては、配当優先株の買戻しに関して発行価額(177億)を大きく上回る530百万ドルから590百万ドルで買い取ることが取締役会決議されたことに疑念をもった監査法人がオリンパスを問いただしたところ、最終的には発行簿価に近い価額で買い戻すよう交渉するとの説明をうけ、最終的に2009年3末において優先配当株の簿価が177億円で据え置かれることになった経緯に関しても、あずさ監査法人の対応に特段の不適正な点は認められないと評価しています。

最後に2009年3月期の監査において、重大な意見対立があったにもかかわらず無限定適正意見を付したことについては、監査役会に業務監査権の発動を促したり、金商法193条の3をほのめかしたりして、訂正な経営判断かについて問題提起をしているとされ、特に問題があったとは評価されていません。

結論としては、同報告書では「あずさ監査法人」の責任はそれほど認められないということのようです。確かに、読む限りそのように感じますが、果たして一般的に受け入れてもらえる感覚なのかは微妙です。

日々成長。

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