『「評判」はマネジメントせよ』-ダニエル・ディマイアー著
企業が様々な危機に直面したときに、どのように対処すれば自社の評判を傷つけずに済むのかという観点で、「評判管理」の手法が述べられている書籍でした。
色々な事例が取り上げられていますが、最初に取り上げられていたのがRC2コーポレーションでした。RC2コーポレーションといわれてもどんな会社かわからないと思いますが、機関車トーマスを取り扱っている会社だそうです。
同社では2007年の6月に、機関車トーマスのおもちゃ150万個をリコールしました。理由は、中国生産工場で使われていた塗料に鉛が含まれている可能性があったためです。
さらに2ヵ月後には、別のおもちゃ5種類を追加リコールし、その数は20万個に及んだとのことです。
この時の対応が良くなかったため、リコールから3年を経過した時点においても、同社の株価は以前の40%の水準にとどまっているようです。
ここで、対照的な事例として、ジョンソンアンドジョンソンのタイレノールの例が取り上げられていました。この「タイレノール」の件については、私も依然聞いたことがありました。
これは1982年に、シカゴ一帯で7人がタイレノールの服用後に死亡するという事件です。その後、警察の調査で、何者かが少なくとも3瓶のタイレノールのカプセル剤をドラックストアから盗み、シアン化合物を混入した上で店頭に戻していたことが判明しました。
ジョンソンアンド損損は、事件発生から5日後、タイレノールを全米リコールを発表し、3100万瓶以上のタイレノール・カプセルを回収し、錠剤タイプと無料交換を行いました。
さらに、事件の1ヵ月後には、不正開封防止対策を施した新型パッケージを発表し、それには外はこの糊封、プラスティックフィルムによるふたの外封、アルミホイルによる瓶の内封が施されていました。
結果的に、ジョンソンアンドジョンソンの対応は30年以上を立っても、語り継がれ今なおプラスの効果を有している一方でRC2コーポレーションは今なお立ち直ることができていません。
同書は、評判の危機において「人々の注目を引く」という点が見逃されがちだと指摘し、評判危機の際の適正な対応がブランド力と信用の向上につながりうるとしています。
では、信頼を回復できるかどうかを分けるポイントは何なのかについて、同書では以下の4点を重要な要素として掲げています。
①透明性
②専門能力
③コミットメント
④共感
①と③について簡単に触れておきます。
①の透明性は、全面開示を意味するわけではなく、透明性を達成する良い方法は、自分が知っていることと知っていないこと、そしていつ追加報告できるのかを相手に伝えることだとされています。
この際大切なのは、相手に理解されることで、専門用語や法律用語ばかりで一般人がわからないような場合は、情報が開示されても「透明」とは思ってもらえないとされています。
③のコミットメントは、問題に対処していることを知らせるということで、一番強力な方法は、経営トップが乗り出して指揮をとることとされています。確かに危機時に、いつまでたっても社長が会見に出てこないというようなことでは、まじめに取り組んでいるとは思われないように思います。
同書で紹介されている評判マネジメントに関連して、米国の”Reputation.com”という会社について聞いたことがあります。
当社は検索エンジン等でネガティブな情報を発見・削除するサービスと、上位に表示されるように評判を向上させる両方のサービスを提供しており、スピード違反で事故死した少女の事故現場写真が警察から流出し、遺族が中傷された事件を解決し脚光を浴びたそうです。
最近では、一度ネットに流出してしまったらどうにもならないという風潮がありますので、このようなサービスは今後ニーズが高まってくるのではないかと思います。ただ、恣意的な情報操作と紙一重といえるので怖くもありますが・・・
日々成長