原発と夜間電力と電気自動車と。
もう8月も終わりです。関西では大飯原発の再稼働をめぐり一悶着あったものの、計画停電やブラックアウトという事態には陥らずに夏を乗り切れそうです。関東では、比較的電力に余力を残して8月を経過してきたように思います。
これが節電努力によるものなのか、今年は「猛暑」という単語をあまり聞かないためなのか、はたまた、余力のあった火力発電所で化石燃料をせっせと燃やしている影響なのかは、いまいちよくわかりません。
周りの人間と話している感じからすると、「節電」については昨年に比べると個々人ではあまり意識されていないように思います。企業についても、昨年と比較して「節電」が著しくすすんでいるようには感じませんが、「節電」というものに慣れてきたためそのように感じるのかもしれません。廊下の電灯が一本おきに抜かれていたり、4機あるエレベータの1機が動いていなかったりしても、あまり違和感を感じなくなってきているように思います。
結果として今年の夏は、関東では原発なしでも何とかなったので、原発反対派からすれば、ほら見たことか!原発なんかなくても大丈夫だ!ということになるのでしょう。原発をどうするかについては、将来日本がどうなっていき、どの程度電力が必要で、そのための電力をどう賄うのかという点から議論していく必要があるのではないかと思いますが、それはマスコミ等に任せるとして、原発がなくなることによるその他の影響を考えると、まず、夜間電力の料金に影響があるようです。
夜間電力料金は日中の料金に比べて電気料金が安くなっています。なぜ夜間電力料金が安いのかについて東京電力のHPには特に記載されていないようですが、原発があるためと言われています。原発は発電量を需要に応じて増減させることが難しく一定の電力を供給することになるため、夜間であっても日中であっても同じ電力が発電され、夜間は電力が余るので価格を低く設定して需要を掘り起こしているという理屈です。
この他、設備の稼働率をあげるため、夜間電力の料金を安く設定しているという説明もたまに見受けられます。変動費以上の料金であれば固定費の回収に資するので、あり得ない話ではありませんが、価格を安くしたからと言って夜間の電力需要が増加するかと言われるとそのようなことはないのではないかと思ます。夜間に電力を必要とするのは、どちらかといえば必要に迫られているからであり、そのような利用者の需要の価格弾力性は低いのではないかと思います。
こう考えると、夜間電力が安いのは原発の性質によるためと考える方が自然のように思います。であるとすると、今後夜間電力は化石燃料を燃やして作らなければならなくなるので、日中の電力をくらべてそれほど安い価格設定とはならなくなるのではないかと思います。
すると、安い夜間電力を使用することでメリットを享受できていたものについては、今後苦しい立場に追い込まれます。そこで登場するのが電気自動車です。従来電気自動車は、安い夜間電力で充電して日中走るというような使い方が想定されていましたが、夜間電力が高くなれば電気自動車のランニングコストにも大きく影響します。また、化石燃料を燃やして作られた電気で走る電気自動車であれば、燃費の良いハイブリッド車の方がやはりECOなのではないかという考えも生じてきます。
このような点を考慮すると、電気自動車かハイブリット車かという勢力争いにおいて、ハイブリット車に追い風が吹いてきたということになりそうです。原発をやめるといったドイツのBMWがハイブリッド車の技術でトヨタと提携するというのもこうした背景があるのだろうと思います。
いずれにしても、多くの産業に影響する内容なので、きちんと議論する必要があると思います。
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