海外の監査水準の低下-PCAOBの調査結果
経営財務3079号に「【海外会計トッピク】Big4会計事務所のリストラ、監査の質低下?その他」という記事が掲載されていました。
同記事の前半では、Big4の会計事務所が、11,300人の事務所員の約3%にあたる300名を削減するという書き出しで始まり、M&AやIPOの減少、あるいは不景気による監査報酬の値下げにより経営が悪化しているということが書かれていますが、これは驚くほどのことではないと思います。
興味深いのは「監査の質の低下?」として記載されていた内容です。同記事ではニューヨークタイムズに掲載されていた”Bad Grades Are Rising for Auditors“という記事がベースとなっています。
上記の記事は、「監査の質が悪化しているのか、検査官の調査能力が高まったのか?」という書き出して始まっています。そして、PCAOB(公開企業会計監査委員会)から公表された仲介業者23社の調査結果によれば、どれ一つとして許容可能なものではなかったとされています。
上記の監査を行った法人名は公表されていないものの、大部分は小規模(very small)の会計事務所によるものであったとされています。
上記は小規模の会計事務所によるものですが、Big4についても監査の質は悪化しているという旨の記述が続きます。PCAOBの調査結果は2010年から公表されるようになりましたが、2010年の調査では6件に1件程度の割合で指摘すべき事項が発見されたが、2011年では3件に1件程度と倍増しているとされています。
製造業やソフトウェア産業であったならば、このような質の低さではユーゴ(質が低いと評判だったユーゴスラビアの自動車メーカー)のように市場から淘汰されてしまうだろうとされています。
そして、Big4で最も指摘事項が多かった(gotten the most negative review)のがデロイトだったそうです。ちなみに記事では”Deloite & Touche”となっていて、トーマツは出てきません。さらに、PCOABが会計事務所の品質管理にネガティブな結論を出した場合、1年以内に改善すればそれが公表されることはないそうですが、デロイトはそれに失敗して、大手事務所で唯一そのようなレビュー結果が公表された法人となってしまったとのことです。
1年内に改善できなかった意味がよくわかりませんが、1年では改善できないほどひどい状況であったということなのでしょうか?
さらにデロイトに不幸なことに、E&Yによるピアレビューの結果、いくつかの監査で十分な監査を行っておらず、デロイトはそれらの監査で追加作業が必要となっただけでなく、クライアントは財務諸表をリステートしなければならなかったそうです。
その結果、大手事務所では初めて”pass with deficiency”という評価を下されたそうです。日本語では何と訳せばよいのかよくわかりませんが、”限定付適正”位の位置付けでしょうか。この件についてデロイトのコメントが記載されていましたが、その最後の一文が”Audit quality has been and continues to be our No.1 priority.”という何ともむなしく思えるものでした。
最後にBig4に対する調査で、PCAOBにより問題が指摘された割合の推移が示されていたので紹介します。
デロイトとPWCがヤバい感じです。
日々成長