「社長、御社の「経営理念」が会社を潰す!」(白潟敏郎 著)って・・・
電車内の広告で見かけて気になっていた「社長、御社の「経営理念」が会社を潰す!」という本を書店で見つけて購入しました。こんなタイトルの本は結構ありそうな気はしましたが、気になったのはこれを書いているのがトーマツイノベーション株式会社の代表取締役社長である白潟敏郎氏であったからです。
といっても、白潟氏をよく知っているわけでも、「トーマツイノベーション株式会社」をよく知っているわけでもありませんが、あのトーマツ系のグループのコンサル会社であれば、それなりに意味のあることが書いてあるのではないかと思った次第です。ブランド力って、やはり重要だな、なんて変に納得してしまいました。
本のタイトルからすると「経営理念」なんて不要だという内容が書かれているのかと思いきや、そうではなく、一言でいえば社員に理解できる形の経営理念を作りましょうということが述べられています。筆者の言葉でいえば、社長の「おもい」や「こだわり」を見える化して「この指とまれ経営を実践しよう」というのが主題だといえます。
では、本のタイトルである「「経営理念」が会社を潰す」とはどういうことかですが、経営理念が本当の意味で社員に浸透しておらず、それ故、社員の行動も変化しないということのようです。このように経営理念が社員に浸透しない理由として、筆者は「中間段階での結論」として二つの理由を挙げています。
①みんなが「理念」という言葉の意味を把握していないから
②ついつい美しい文章を作成してしまい、ありふれた文言になってしまうから
確かに、会社の経営理念が何かを答えられたとしても、その経営理念がどのような意味を持っているのか?という点を理解していないと行動に影響を与えられるわけはないと思います。ちなみに、「理念」とは「根底にある基本的な考え方」という意味です。
そこで筆者は、「経営理念」という理解が難しい表現ではなく、「当社は何のために存在するのか?」という簡単な表現に変えてしまうという方法を推奨しています。「経営理念」として作成されていたものと、「当社は何のために存在するのか?」という観点から作成した文章を比べてニュアンスが異なっていたとしても、「理念」が「根底にある基本的な考え方」である以上、会社の存在意義は何かという観点で作成されたものを「理念」に置き換えても問題ないはずとされています。実際に、「経営理念」として作成したものよりも、会社の存在意義は何かという観点で作成されたものの方が、腹落ちしたものとなるそうです。
存在意義をつくる際のポイントとしては、以下の五つがあげられていました。
①社長が自分で作る
②語尾は「○○のために存在する」
③3回寝かす
④単語にこだわる
⑤最終版は幹部や社員にも見せて意見を聞く
何となくイメージできるかもしれませんが、③の3回寝かすについてのみ触れておくと、作成後1週間程度期間を置いてから見直すという作業を3回くりかえるとよいとされています。1週間くらい間隔をあけることで客観的な見直しが可能となり、それを3回位繰り返すとより洗練されたものになるとのことです。
そして、存在意義を明確にすることによるメリットとして以下の七つが挙げられています。
①「存在意義」に「合わない」社員が”卒業”してくれる
②マネジメントストレスがなくなる
③全員の心がひとつになり組織が活性化する
④共感者が商品を購入してくれる
⑤共感者が紹介・協力をしてくれる
⑥共感者がホームページから引き合いをくれる
⑦「合う」人が応募してくれ、「合わない人」は入社しなくなる
「存在意義」が明確になったら、それ以外の「こだわり」も見える化することが推奨されています。ここでいう「こだわり」とは、「会社の存在意義を体現するために、社長が経営・仕事をするうえでこだわっていること」と説明されています。
「こだわり」をつくることのメリットとしては、以下の四つが挙げられていました。
①「存在意義」を体現しやすくなる
②「存在意義」への共感の度合いが検証できる
③「存在意義」のメリットをより確実にする
④管理職のマネジメント力を強化する/p>
上記②の共感の度合いが検証できるというのは確かに意味があるのではないかと思います。会社が成長する過程で、会社の風土にそぐわない社員が増えてきて労使間でトラブルが発生しるということも多いので、会社の価値観に合わない場合には、その会社を辞めた方が労使双方のためにも好ましいと考えられます。しかしながら、実際には合う合わないを確認するような機会が乏しく、それを表面的な成果などで評価し処遇に反映させることによって、より関係がこじれるということが多いように感じます。会社の向かっていく方向(価値観)に合わないことを明確に意識させて、自発的に卒業させていく仕組みというのはよいのではないかと思います。
この本は、数時間で読めてしまう程度のものなので興味があるかたは読んでみてもよいと思います。
日々成長