円安でトヨタ自動車の業績改善は本当か?(その1)
2013年2月6日の日経新聞朝刊1面に「車・精密に円安効果 トヨタ1100億円上方修正」という記事が掲載されていました。
この記事の内容としては、円安が自動車や精密機器業界の収益を押し上げる一方で、中国景気の減速の影響で産業全体での経常利益の伸びは4%程度になりそうというものです。
ところで、トヨタの業績については2面の記事で、以下のように述べられています。
「トヨタ自動車は5日、2013年3月期の連結業績予想を上方修正するとともに、単独営業損益が1500億円の黒字になることを明らかにした。単独営業黒字は5年ぶり。円安による採算改善に加え、北米などでの販売増や原価低減も寄与する。業績の足を引っ張ってきた単独決算の黒字化により海外で構成をかける態勢が整う。」
「特に営業赤字化は「国に税金を払い、雇用やものづくりを守るために必要」(豊田章男社長)としてトヨタがこだわってきた目標だ」
「単独の改善が連結営業利益を1000億円引き上げる最大の原動力となった。業績の改善は単独で1400億円にのぼる円安効果に加え、海外販売の伸びも大きい。」
「トヨタは北米とロシアを含む欧州などで計10万台上方修正し、円安効果も加わった。東南アジア好調も下支えする。北米向けの伸びを輸出を通じて単独業績を押し上げる。
「部品の調達費削減の効果もある。仕入れ先と一体となったコスト削減効果は数百億円規模にのぼったもよう。」
なんだか、わかったようなわからないような・・・。どうやら連結業績の改善は単体業績の改善の影響が大きいということのようですが、「海外販売の伸び」、「北米とロシアを含む欧州などで計10万台上方修正」、「東南アジア好調も下支え」、「仕入れ先と一体となったコスト削減」などが単体業績に与える影響なのか、連結ベースでの話なのかが明確ではありません。
そこで、トヨタ自動車株式会社のHPに掲載されている「2013年3月期第3四半期決算説明会」資料を確認してみました。この説明会資料ですが、表紙に使用されている車は、LEXUS LS600hでした。単体の業績改善がテーマの決算説明会の表紙がLEXUSというのもなんだか不思議な感じです。本決算はピンクのクラウンか?
ちょっと興味があったので、過去の決算説明会の表紙に使われていた車種を確認してみることにしました。すると、以下のような感じでした。
・2013年3月期第2四半期 スペイド
・2013年3月期第1四半期 LEXUS ES
・2012年3月期本決算 LEXUS GS450h
・2012年3月期第3四半期 AQUA
・2012年3月期第2四半期 車種不明トヨタのセダン(書かれていない)
・2012年3月期第1四半期 プリウスα
ハイブリッド車とLEXUS中心という感じです。
ちょと話が逸れましたが、2013年3月期第3四半期決算説明会資料のP9に連結当期純利益の増減要因を分析した以下の図が掲載されていました。
(出典:トヨタ自動車 2013年3月期第3四半期決算説明会資料P9)
大きなところを抽出すると以下のようになっています。
・営業面の努力 6,600億円
・原価改善の努力 3,200億円
・諸経費の増加他 ▲2,400億円
・法人税他 ▲2,897億円
「為替変動の影響」という項目は存在しますが、影響額は▲100億円で、上記の項目と比べるとその影響は微々たるものです。いったい何が本当なのかわからなくなってきました・・・
もうすこし資料を見ていくとP17に「13年3月期見通し増減要因:連結決算」という分析資料が掲載されていました。ここでは、2Q時点での見通しからの1,000億円の増加要因が記載されています。ここでは、為替変動の影響が+1,400億円と記載されています。
やはり円安の効果が大きいのか、とさらに資料を見ていくと、P23に「13年3月期見通し増減要因:連結決算(vs’12/3期実績)」が掲載されていました。
12/3期と比べて営業利益が7,944億円増加する見通しとなっていますが、結局のところ、7,944億円増加に占める為替変動の影響はどれくらいだと思うでしょうか?
答えは+300億円です。結局円安が進んでもトヨタの連結業績に与える影響は小さいということなのではないかと推測されます。自動車産業→輸出企業→円安で大きく業績改善というイメージですが、どうもそんなに単純な話ではないようです。もう少し、調べてみたいところですが、今回はここまでとします。
日々成長