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証券取引委員会の課徴金事例集-不正事例は読んでおくとよいのでは?

2013年6月26日に証券取引等監視委員会(SESC)から「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編」が公表されました。

これによると平成25年度の課徴金納付命令勧告件数は2件と平成18年以降で最少の件数となっています。平成25年度の業種別内訳は、電気機器と小売業が各1件となっていますが、平成18年度以降の累計では、全体で64件のうち、情報通信が15件、卸売業が10件と多くなっています。

面白いのは、課徴金納付命令が発生している年度に偏りが見られるという点です。例えば、情報・通信では平成19年と22年が4件、平成23年が5件となっており、機械業では累計で3件ですべてが平成20年に発生しています。

どこかの会社見つかった粉飾等が引き金となって、同じような粉飾を行っていないかのチェックが厳しくなることによるのではないかと推測されます。

そして、この課徴金事例集には、実際にあった不適切な会計処理等の事例が記載されているので色々な意味で参考になります。今回取り上げられている事例は全部で13あり、このうち2つは開示書類の不提出によるものですので、会計処理的な事例としては全部で11です。

例えば、事例1では架空売上の計上が取り上げられています。会社名は明示されていませんが、ラーメン店をチェーン展開していてジャスダックを上場廃止になった会社ですので、どさん子ラーメンをチェーン展開している会社でしょう(以下H社とします)。

この事例は、海外展開のフランチャイズ権販売を偽装して売上を架空計上したというものです。アメリカ西海岸とシンガポールの2件で架空の売上計上を行っていたそうですが、そもそも粉飾を行わなかった場合の連結純損失が△12.9億円に対して、粉飾後の連結純損失が△9.4億円なので、率直な感想としては無意味な・・・という感じはします。
守らないとまずい借入等の財務条項があったのかもしれません。

気になる手口の一つは、不動産の購入価格の水増しによるものです。これは、元々購入予定であった不動産を、真の売主⇒架空売上先⇒H社という経由で購入することによって、本来の購入価格よりも高い価格で不動産を購入し、架空売上先に資金をプールし、あたかもフランチャイズ権の購入代金と見せかけたというものです。

もう一つは、もっとシンプルなもので契約書を偽装し売上・売掛金を計上した上で、同社に粉飾の協力要請を行い、H社から相手先に資金を融通し、それを売掛金の回収と偽装したというものです。

このような不正取引が生じた背景としては、以下の2点が指摘されています。

(1)取締役会及び監査役会の機能不全
代表取締役が主導した不正取引は、経営会議等において議論されていたが、取締役会及び監査役会が、稟議書の作成回付などの本来行われるべき手続きがなされていなかったことを指摘した経緯は認められなかった。取締役会が実態として代表取締役の追認機関となっており、また、監査役及び監査役会もこれら実態を見過ごしていたなど、経営管理機能が不十分であった。

(2)内部統制の機能不全
当社は、内部統制監査室を設置し、人員も配置していたが担当者が少数で空席期間があったなど、内部統制が機能していなかった。

個人的には、取締役会や監査役会を機能不全にさせる別の理由があったのではないかという気がしてなりません。

このような事例が他に10件ありますので、時間があるときに読んでおくとよいのではないかと思います。

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