MMF(MRF)は時価のあるもの、ないもの?
今回はMMF(MRF)についてです。
MMFにしてもMRFにしても、リスクがほとんどない投資信託で預金と同様の性格を有するものです(金融商品会計に関するQ&A19)。
金融商品会計に関するQ&A19では、取得原価をもって貸借対照表価額とする(実務指針第64項)こととされている「投資信託及び合同運用の金銭の信託のうち預金と同様の性格を有するもの」の例としてMMFやMRFが挙げられています。
「預金と同様に実質的に元本の毀損のおそれがほとんどないものであれば、時価で評価しなくとも実務上の弊害がない」とされていることから、MMFもMRFも「時価のあるもの」に該当すると考えるのが無難だと考えられます。
また、金融商品実務指針62項では以下のように規定されています。
投資信託に付すべき時価は市場価格とし、市場価格がない場合には市場価格に準ずるものとして合理的に算定された価額が得られればその価額とする。
市場価格に準ずるものとして合理的に算定された価額には、投資信託委託会社の公表する基準価格、ブローカー又は情報ベンダーから入手する評価価格が含まれる。
また、私募投信であっても、その投資信託に組み入れられた有価証券等について市場価格に基づく価額がある場合、あるいは時価を合理的に算定できる場合には、時価のある投資信託とする。
上記からしてもMMF、MRFは時価のあるものとして取り扱うのが妥当と考えられます。
では金融商品関係の注記としてどのような開示が行われているのかを確認してみると、開示の方法は結構バラつきがあります。
1.ダイセル(2013年3月期)
「2.金融商品の時価等に関する事項」のBS計上額と取得原価の比較表の欄外に「※1 短期公社債投資信託(MMF)等(連結貸借対照表計上額 2,601百万円)については、実質的に預金と同様の性格を有し、元本の毀損の恐れが極めて小さく時価評価を要しないことから、「(3)有価証券及び投資有価証券」に含めておりません」という記載がなされています。
つまり「時価のあるもの」と取り扱っているものの金融商品の時価開示には含まれていません。
2.ドリームインキュベータ-(2013年3月期)
「1. 金融商品の時価の算定方法に関する事項」の「(4)有価証券」において「有価証券は、主に譲渡性預金やMMF等の公社債投資信託等、いずれも短期間で決済されるものであり、時価は帳簿価額とほぼ等しいことから、当該帳簿価額によっております。」と記載されています。
このことから取得原価=BS計上額として「有価証券」に含めて開示されていると考えられます。
3.ハードオフコーポレーション(2013年3月期)
ハードオフコーポレーションでは以下のような開示が行われています。
この事例では「2.時価を把握することが極めて困難と認められる金融商品」に「MMF」が含まれているため「時価のないもの」扱いになっていると考えれます。上記のとおり「時価のあるもの」扱いが一般的だと考えられますが、このような取扱いもアリなのかもしれません
商品自体が理解できないという複雑な金融商品ではありあませんが、開示は結構頭を悩ませるものの一つかもしれません。
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