たな卸資産評価損のCF計算書(間接法)における取扱い
今回は、キャッシュフロー計算書(間接法)における「たな卸資産評価損」の取扱いについてです。
ことの発端は内部資料として簡易に作成したCF計算書がなんだかおかしいという相談を受けたことでした。精算表等を作り込んでいけば、おそらく気づくことだと思いますが、その原因が「たな卸資産評価損」の取扱いにありました。
担当者は、たな卸資産評価損は非現金支出なので、減価償却費と同様に営業CFの部分で税前利益に加算が必要と考えて、税前利益にたな卸資産評価損を加算していましたが、一方でたな卸資産の増減については、棚卸資産の増減額をそのまま「たな卸資産の増減額」として取り扱っていました。
ここに問題があったわけです。
つまり、たな卸資産残高の増減にはすでに「たな卸資産評価損」計上によるたな卸資産の減少分の影響が含まれているため、別途「たな卸資産評価損」を表示すると二重に影響が考慮されることになり、最終的に現預金の変動とCF計算書が合わないということになってしまいます。
たな卸資産評価損が損益計算書に計上されている場合のCF計算書上の取扱い方法は、以下のいずれかになると考えれます。
(1)損益計算上の「たな卸資産評価損」は無視して、貸借対照表のたな卸資産残高の増減額をそのままCF計算書上「たな卸資産の増減額」として表示する
(2)損益計算上の「たな卸資産評価損」をCF計算書上、減価償却費と同様に「たな卸資産評価損」として表示した上で、貸借対照表のたな卸資産残高の増減額から評価損の影響を除いた分をまCF計算書上「たな卸資産の増減額」として表示する
連結財務諸表等におけるキャッシュ・フローの作成に関する実務指針の12項における間接法の説明では、「ここでいう非資金損益項目とは、税金等調整前当期純利益の計算には反映されるが、キャッシュ・フローを伴わない項目、例えば減価償却費、のれん償却額、貸付金に係る貸倒引当金増加額、持分法による投資損益等を指す。しかし、営業債権の貸倒償却損、たな卸資産の評価損等の営業活動に係る資産及び負債に関連して発生した非資金損益項目は、税金等調整前当期純利益の計算に反映されるとともに、営業活動に係る資産及び負債の増減にも反映されていることから、税金等調整前当期純利益に加減算する非資金損益項目には含まれない。」とされています。
したがって、上記(1)の方法によっても特に問題はないと考えられますが、実務上はPLにおいて、たな卸資産評価損が独立掲記されている場合には、CF計算書上もあえて「たな卸資産評価損」を独立掲記していることも多いように思います。
この関係がわかりやすい事例はそれほど多くないのですが、例えば㈱ダイケンの2010年2月期の貸借対照表およびCF計算書は以下のようになっています。
この事例では、たな卸資産の変動額合計(324,752)がCF計算書上の「たな卸資産評価損」(38,121)と「たな卸資産の増減額」(286,630)に分解されていることが確認できます。
表示方法はどちらでも構わないと思いますが、二重に影響させて「その他」で調整なんてことがないようにだけは注意が必要です。
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