リースに使用権モデルは「支持しない」が9割超
経営財務3134号に公益社団法人リース事業協会が国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が公表した改訂公開草案「リース」に関連して上場3,538社および非上場大会社5,688社に行ったアンケート結果が掲載されていました。なお、このアンケート結果の全文は、公益社団法人リース事業協会のHPで”改訂公開草案「リース」に対する見解”として後悔されています。
そして、改訂公開草案で提案されている借手の会計処理を指示するかという質問に対しては、全体の90.8%が支持しないという回答をしたと報告されています。提案を支持しない回答者が示した理由としては以下の五つが掲げられています。
- 現行基準で不足する情報があれば、開示情報の充実を図るなど実務やコストに見合った改善を加える方が合理的である(43.9%)
- 現行リース会計基準が適切である(36.4%)
- 不動産リースについては現行基準どおりオフバランスが適切である(14.2%)
- 現行のオペレーティング・リースについてオンバランスする場合でも、不動産リースと不動産以外のリースを区分しないで定額費用処理するのが妥当である(3.0%)
- その他(2.5%)
さすがにそれらしい理由が書かれていますが、これ以上面倒なことはやめてほしいというというのが本音ではないでしょうか。
そして”改訂公開草案「リース」に対する見解”の中で示されている「リース会計に対する基本的見解」では以下の4点が述べられています。
- 改訂公開草案は、多くの問題を包含し、かつ、財務諸表作成者に対して過重な負担を強いる
- 提案されている借手の会計処理は、設備リースの利便性を喪失させ、設備リースの利用機会を減退させる
- 多くの問題を残した状況で新たなリース会計基準を発効すべきではない
- 現行基準を維持し、開示情報の充実にとどめるべき
細かい内容は割愛しますが、リース事業協会が総数64頁におよぶ「リース会計に対する基本的見解」・「調査結果」などを公表している主な理由は上記の2によるところが大きいと考えられます。上記の2については以下のように説明されています。
リースは、利便性のある設備調達手段であり、今日、多くの国や地域において利用され、リースによる企業の設備投資促進を通じて、安定的な経済成長をもたらす重要な役割を担っている。提案されている借手の会計処理は、設備リースの利便性を喪失させ、企業による設備リース利用機会を大きく減退させる。当協会としては、新たなリース会計基準によって予想される設備リースの利用及び世界経済の成長への悪影響を看過することはできない。
要はリースの利用者が減るとリース業界が困るのでやめてほしいということだと思いますが、この点に関しては、リース基準が改訂公開草案のように改正されてもそれほど影響はないのではないかと思います。
同協会が公表しているリース需要動向調査報告書(2010年10月)によれば、オペレーティングリースを理由している理由に対する回答結果は以下のようになっています。
たしかに「賃貸借処理でき従来のリースメリットを享受できる」という回答が上位にあるので、仮に何らかの資産計上が求められるのであればこのメリットが享受できなくなってリース利用者が減少する可能性はあります。しかしながら、一方で所有権移転外ファイナンスリースを使用している理由の回答結果は以下のようになっています。
上記からすると、当初資金が少額ですみ、コスト管理を含む事務管理面でのメリット(残念ながらここに経理処理の煩雑性は考慮されていないようですが)があることが所有権移転外ファイナンス・リースを利用する主な理由となっています。
さらに、所有権移転外ファイナンス・リースの原則資産計上が求められる以前の2005年に公表されているリース需要動向調査報告書ではリース利用理由に対する回答結果が以下のように示されています。
リースを利用する理由については、会計基準がどのようになろうともあまり変わっていないので、実際問題としては会計基準が変更されても、それを理由にリース利用者が激減するという事はないのではないかと考えられます。ただし、税務上、購入した場合と比較してデメリットが生じるようであれば影響が大きいと思いますが、現実問題としてそうはならないと予想されますので、やはり利用者数に大きな影響はないのではないかと考えられます。
そうはいっても、個人的にはあまり意味があるとは思えず、単に面倒なだけなので辞めて欲しいと考えています。
日々成長