改正会社法(その3)-監査等委員会設置会社詳細(その2)
“改正会社法(その2)-監査等委員会設置会社詳細(その1)“の続きです。
監査等委員会設置会社に関連する事項を確認していきます。
5.独立性確保の仕組み
前回述べたように監査等は「取締役」なので、代表取締役から独立性を確保する必要があります。そのための制度として以下のような仕組みが設けられています。
(1)株主総会での選任方法
監査等委員は株主総会の決議によって選任されますが、監査等委員以外の取締役とは区別して選任されます(改正会社法329条2項)
なお、補欠監査役と同様、欠員に備えて補欠の監査等委員である取締役を選任しておくことも認められています(改正会社法329条3項)。
(2)選任議案の同意権・提案権
取締役が、監査等委員である取締役選任の議案を株主総会に対して提出するときは、監査等委員会の同意が必要となります(改正会社法344条の2第1項)。
また、監査等委員会は、取締役に対し、監査等委員である取締役の選任を株主総会の目的とすること、または監査等委員である取締役の選任に関する議案を株主総会に提出することが認められています(改正会社法344上の2第2項)。
いずれも監査役会設置会社における規定に類似した内容となっています。
(3)監査等委員である取締役の解任方法
通常の取締役の解任は株主総会の普通決議で行うことができますが、監査等委員である取締役の解任には株主総会の特別決議が必要となります。
これも、監査役の解任が株主総会の特別決議とされていることとの整合的です。
(4)選任・解任・辞任についての意見陳述権
各監査等委員は、他の監査等委員である取締役の選任もしくは解任または辞任について株主総会で意見を述べることができるとされています(改正会社法342条の2第1項)。
また、監査等委員である取締役を辞任した者は、辞任後最初に招集される株主総会に出席して、辞任した旨およびその理由を述べることができるとされています(改正会社法342上の2第2項)。
さらに、監査等委員以外の取締役の選任もしくは解任または辞任についても、株主総会で意見を述べることができるとされています(改正会社法342条の2第4項)。
これは監査役会設置会社における監査役にはない権限です。指名委員等設置会社(従来の委員会設置会社)の指名委員会に準じた機能を与えられているということになります。
(5)任期短縮の制限
監査等委員である取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされています。つまり、任期は2年です。
そして、この任期は定款や株主総会の決議によっても短縮することはできません(改正会社法332条1項、4項)。
監査役会設置会社の取締役の任期は通常2年なので、そうだとうすると独立性確保という点で問題があるのではということになりますが、監査等委員会設置会社の取締役の任期は1年となっています(改正会社法332条3項)。
監査役の任期は4年ですが、監査等委員といえども「取締役」である以上、任期4年は長いとの考えから2年とし、その代り他の取締役の任期を1年としたということのようです。
ちなみに会計監査人設置会社で取締役の任期が1年の場合、剰余金の配当等の決定権限を定款によって取締役会に移譲することが可能ですが、監査等委員会設置会社の場合も、定に定めることによって同様に取締役会に権限を委譲することが可能となっています(改正会社法459条1項)。
監査等委員会設置会社の場合、厳密には任期2年の取締役(監査等委員)がいるわけですが、取締役とはいえ監査等委員という側面を勘案し、このような取り扱いが認められています。
(6)報酬の決定・意見陳述権
これも監査役の報酬と類似しています。すなわち、監査等委員である取締役の報酬は、監査等委員以外の取締役とは区別して定款又は株主総会の決議により定める必要があります(改正会社法361条2項)。
監査等委員の報酬が各人別に決定されていない場合に、定款または総会決議で定められた報酬の範囲内において、監査等委員間での協議により報酬が決定されるという点も監査役会における各監査役の報酬と同様の取扱となっています(改正会社法361条3項)。
また、各監査等委員は、監査等委員である取締役の報酬等について株主総会で意見を述べることができるとされているのも、監査役と同様です(改正会社法361条3項)。
最後に、監査等委員会が選定する監査等委員は、監査等委員である取締役以外の取締役の報酬等について監査等委員会の意見を述べることができるとされています(改正会社法361条6項)。
これも監査役会設置会社における監査役にはない権限となっています。
長くなりましたので今回はここまでとします。