改正会社法(その6)-会計監査人関連の改正
今回は改正会社法(その6)として会計監査人に関係する部分の改正内容を確認します。
改正会社法で大きく変わるのは以下の点です。
1.会計監査人の選任・解任等の議案の内容の決定権者
改正会社法では、監査役(会)設置会社において、会計監査人の選任・解任および会計監査人を再任しないことに関する議案の内容の決定権が監査役(会)に与えられています(改正会社法344条1項~3項)。
現行会社法では、会計監査人の選任や解任の議案について、取締役は監査役(会)の同意を得なければならないとされており、議案の内容自体を決定するのは取締役(会)となっています。
改正会社法では、上記のとおり議案の決定自体が監査役(会)の権限とされているという点が大きく異なっています。
現行法においても、監査役(会)に同意権が認められているわけですが、取締役が会計監査人の選任や解任(さらには報酬)を決定できるため、取締役に対して会計監査人が弱い立場が弱くなり、厳正な会計監査遂行の阻害要因となる可能性が指摘されていました。
今回の改正は、このような状態を解消することを目的としているとのことです。もっとも、監査役が取締役に対して厳正な立場に立てていないと意味はあまりありませんが・・・
関連する条文を確認しておくと以下のようになっています。
(会計監査人の選任等に関する議案の内容の決定)
第三百四十四条 監査役設置会社においては、株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容は、監査役が決定する。2 監査役が二人以上ある場合における前項の規定の適用については、同項中「監査役が」とあるのは、「監査役の過半数をもって」とする。
3 監査役会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会」とする。
2.会計監査人の報酬等の決定権
会計監査人の報酬の決定権についても、監査役(会)の権限とする方向で検討がなされていましたが、最終的に現行法の枠組みのまま改正は行われませんでした。
すなわち、会計監査人の報酬決定権限は取締役にあるが、監査役(会)設置会社では監査役(会)の同意が必要とする取り扱いが改正後も継続されます。
選任・解任議案の決定権よりも報酬の決定権の方が、会計監査人の独立性確保という点ではインパクトが強いように感じますが、監査報酬の決定は経営判断の要素が強いこと、および監査役(会)に認められている同意権を適切に行使することによって会計監査人の独立性は確保できると考えられることから現行の枠組みが維持されることとなったとのことです。
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