セール・アンド・リースバックのCF計算書の表示区分は?
今回は、セール・アンド・リースバック(リースバックがファイナンスリースに該当する場合)のキャッシュ・フロー計算書における表示区分についてです。
通常のファイナンスリースの場合、リース資産・リース債務の計上時はキャッシュ・フローが生じない非資金取引であるためキャッシュ・フロー計算書には記載されません。
その後、リース債務の支払いが行われた時点で、「リース債務の返済による支出」のような科目で財務活動によるキャッシュ・フローの区分に記載されることとなります。
これは「当該リースが資金調達活動の一環として利用されているものと認められる」ためです(連結CF実務指針34項(1))。
さて、セール・アンド・リースバックの場合は、所有していた固定資産を売却して、再度リースし直すので、通常のファイナンスリースと異なりこの時点でキャッシュ・フローが発生します。
このキャッシュ・フローを「固定資産の売却による収入」として投資活動によるキャッシュ・フローとみるのか「セール・アンド・リースバックによる収入」として財務活動によるキャッシュ・フローとみるのかが問題となります。
まず開示例を検索してみたところ、実務上は以下の例のように財務活動によるキャッシュ・フローの区分に「セール・アンド・リースバックによる収入」として表示されている事例が散見されました。
(古河電気工業株式会社 2014年3月31日)
これは、固定資産の売却取引とファイナンス・リースが一体となって資金調達活動の一環として利用されているという考え方によるものであると考えられます。
セール・アンド・リースバックは損益の計上方法に一定の制約はあるものの、会計上も基本的には固定資産の売却取引と認められることを重視すれば投資活動によるキャッシュ・フローに含めて処理するということも考えられます。
しかしながら、そもそも通常のファイナンス・リースについても、有形固定資産の取得という側面と資金調達という側面を有しており、資金調達という側面を重視した処理が行われていることからすれば、固定資産の売却取引とファイナンス・リースが一体となったセール・アンド・リースバック取引についても資金調達という側面を重視して「財務活動によるキャッシュ・フロー」に表示するということになると考えられます。
なお、リースバック取引がファイナンスリースではなくオペレーティングリースとして処理される場合には、固定資産の売却による収入として投資活動によるキャッシュ・フローの区分に表示されることになります。
リースバック取引がオペレーティングリースに該当する取引である可能性はありますが、セール・アンド・リースバック取引を投資活動によるキャッシュ・フローの区分で開示している事例としては以下のものがありました。
1.スーパーバリュー(2014年2月28日)
7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(3)キャッシュ・フローの分析
「(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、44億46百万円(前事業年度に使用した資金は5億円)となりました。これは主に、ValuePlaza上尾愛宕店のセール&リースバックによる売却代金60億39百万円、新規設備取得等に伴う有形固定資産の取得による支出6億94百万円及び新規出店予定店舗等に係る差入保証金の差入による支出8億88百万円によるものであります。」
2.ラウンドワン(2014年3月31日)
「(2)当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は、既存店舗が軟調に推移した影響等により84,272百万円(前年同期比△1.9%減)となりました。
営業利益は、店舗運営に関する売上高の減少等により10,088百万円(同12.8%減)となり、経常利益は、7,818百万円(同4.9%減)となりました。
なお、セール・アンド・リースバックに伴う、固定資産売却損及び減損損失等の影響により、当期純損失19,681百万円(前年同期は601百万円の当期純利益)となりました。」
キャッシュ・フローが生じているとすると、財務活動によるキャッシュ・フローには含まれていないようなので、投資活動によるキャッシュ・フローの「有形固定資産の売却による収入」に含まれていると推測される。
日々成長