よくある外形標準課税申告誤りとは?
税務通信3423号の税務の動向で「東京都における外形標準課税で申告誤りの多い事例を紹介」という記事が掲載されていました。
同誌が、東京都主税局へ取材した結果として、誤りが多いものとして以下の三点が取り上げられていました。
- 資本割の課税標準である「資本金等の額」の計算誤り
- 負担軽減措置の控除額の計算で用いる「旧税率」の適用誤り
- 法人住民税均等割の「資本金と資本準備金の合計額」の記載漏れ等
「東京都主税局では、現在行われている3月決算法人の申告内容の確認作業中に、これら誤りが発見された場合,修正申告を促している」とのことですが、再度確認しておくにあたり上記の内容を簡単に確認します。
1.資本割の課税標準である「資本金等の額」の計算誤り
これは自己株式を取得している場合に、外形標準課税の資本割の課税標準となる「資本金等の額」の計算を誤っていることが散見されるというものです。
自己株式を取得した場合、それが相対取引による取得なのか、金融商品取引所の開設する市場で取得したものなのかによって減算額が異なるとされていますが、自己株式を相対取引で取得したにもかかわらず金融商品取引所の開設する市場で取得した場合の「交付した金銭の額」を減算額としているケースが多いとのことです。
相対取引で取得した場合および金融商品取引所の開設する市場で取得した場合の減算額はそれぞれ以下のようになっています。
①相対取引で取得した場合
自己株式取得直前の資本金等の額/自己株式取得直前の発行済株式数×自己株式の取得に係る株式数
②金融商品取引所の開設する市場で取得した場合
交付した金銭の額
株式の譲渡対価は1株当たりの資本金等の金額よりも大きくなるのが通常だと考えられますので、仮に上記①で計算すべきところ②を用いていると資本金等の金額があるべき金額よりも過少に計算され、資本割の金額も過小に算出されているということになります。
2.負担軽減措置の控除額の計算で用いる「旧税率」の適用誤り
これは平成27年税制改正後の申告で誤りが多い事例として取り上げられているものです。内容としては、、外形標準課税の拡充による激変緩和措置として税負担の軽減措置が図られていますが、その軽減額を算定する際に用いる税率を誤って適用しているというものです。
このようなミスが生じる背景としては、3月決算法人の場合、過去の申告で一度も使用したことがない税率を用いなければならないということがあります。
3月決算法人の平成28年3月期の申告の場合、適用すべき旧税率は、平成27年3月31日現在の旧地方税法に規定された税率とされているため、平成26年10月1日以後開始事業年度の税率を適用する必要がありますが、この税率ではなく平成26年9月30日までに開始する事業年度の税率を適用しているケースが多く見られるとのことです。
ちなみに、上記軽減措置を受ける場合の東京都の平成28年3月期の適用税率は4.66%(軽減税率不適用法人の所得800万円超部分)となっています。
3.法人住民税均等割の「資本金と資本準備金の合計額」の記載漏れ等
これも平成27年度税制改正後の申告で誤りが多い事例として取り上げられているものです。
平成27年度税制改正により、無償増減資の加減算措置等が設けられたことに伴い、第6号様式も改正され「資本金と資本準備金の合計額」等の記載欄が設けられているにもかかわらず、その記載を失念しているケースが多いとのことです。
これだけであれば次回から気をつけましょうという程度なのではないかと思いますが、”「資本金等の額」よりも「資本金と資本準備金の合計額」が大きいにもかかわらず、「資本金と資本準備金の合計額」を均等割の税率区分の基準としていないケースもある”とのことで、こちらは税額に影響するので注意が必要です。