子の看護休暇と時季変更の可否
年次有給休暇には使用者に時季変更権が認められています(労基法35条5項)。ただし、無条件に認められるわけではなく、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」にのみ認められるものとなっています。
そこで、子の看護休暇にも、このような時季変更権が認められるのかですが、これは認められません。子供が病気で看護が必要なので休みたいという時に、時季を変更されては意味がありませんので、時季変更が使用者に認められないのは普通に考えれば納得できると思います。
また、労基法上、年次有給休暇については例外的に認められている時季変更権が子の看護休暇では規定されていないことからも子の看護休暇について使用者に時季変更権が認められていないと解釈できます。では、子の看護休暇について明確に時季変更権が認められない旨が記載されているものがあっただろうかと確認してみると、平成21年12月28日の職発第1228第4号のP66に以下のように記載されていました。
事業主は、経営困難、事業繁忙その他どのような理由があっても労働者の適法な子の看護休暇の申出を拒むことはできないものであること。また、育児休業や介護休業とは異なり、事業主には子の看護休暇を取得する日を変更する権限は認められていないものであること。
というわけで、子の看護休暇について使用者に時季変更権は認められないわけですが、これを逆手にとって子の看護休暇の申出が連休の合間に出されたものの、なんだか怪しいという場合にはどうするかが問題となります。
一般的にはこのような事態を想定し(あるいは適切な申出がなされるように)、就業規則において、子の看護休暇の申出にあたり会社は必要に応じて診断書等の提出を求めることができる旨が記載されていることが多いと考えられます。このような定めがある場合には、その規則に従って従業員に診断書等の提出を求めて事実関係を確認すればよいということになります。
では、就業規則にそのような規定がない場合、会社は従業員に対して診断書等の提出を求めることができないのかですが、そのようなことはありません。この点については、育児介護休業法施行規則30条2項で以下のように定められています。
事業主は、看護休暇申出があったときは、当該看護休暇申出をした労働者に対して、前項第四号に掲げる事実を証明することができる書類の提出を求めることができる。
上記で言う前項第四号は「看護休暇申出に係る子が負傷し、若しくは疾病にかかっている事実又は前条に定める世話を行う旨」となっています。したがって、就業規則に規定がなかったとしても「事実を証明することができる書類」の提出を求めることは可能です。
ただし、「事実を証明することができる書類」は診断書に限られないという点には注意が必要です。前述の通達ではこの書類について以下のように述べられています。
則第30条第2項の「証明することができる書類」として利用可能な書類の例としては、同条第1項第4号の「負傷し、若しくは疾病にかかっている事実」については医療機関の領収書や、保育所を欠席したことが明らかとなる連絡帳等の写しなどが、同号の「前条に定める世話を行うこととする事実」については医療機関等の領収書や健康診断を受けさせることが明らかとなる市町村からの通知等の写しなどが考えられるものであること。また、看護休暇申出をする労働者に過大な負担を求めることのないように配慮するものとすること
個人的な感覚としては、従業員に「医療機関の領収書」の提示を求めていることが多いように感じますが、上記の通達では「保育所を欠席したことが明らかとなる連絡帳等の写し」も例示されていたという事実を改めて認識しました。確かに、子供の具合が悪いからと言って必ずしも医者に行くとは限りませんので、連絡帳等の写しという選択肢も確かにありえますね。
具合が悪くないのに子供を医者に連れて行く親はまずいないと考えられる一方で、具合が悪くなくとも保育園を休むことはできるという点をどう考えるかということはありますが、本当に必要だから取得している従業員が大多数であるという前提であれば、この辺は割り切るしかないと思います。