「高額特定資産」とはなんですか?(その2)-平成23年改正(特定期間による判定)
前回は平成22年度税制改正で導入された調整対象固定資産等について確認しました。今回は、平成23年度税制改正で導入された特定期間による納税義務免除の特例について確認することとします。
1.なぜこの改正がなされたのか
最近の消費税の改正はなぜ行われるのかといわれれば、基本的に課税逃れを防止しようとすることにあるといえます。意図的な課税逃れではなくても、結果的に課税が漏れるのが合理的ではないと考えられるのであれば、それに課税しようという改正の繰り返しともいえるかもしれません。
消費税法において、法人又は個人事業者が免税事業者に該当するか否かの判定は基準期間の課税売上高で判断するのが原則となっています。
そして、基準期間における課税売上高とは、個人事業者の場合は原則として前々年の課税売上高のことをいい、法人の場合は原則として前々事業年度の課税売上高のことを意味します。なお、基準期間が1年でない法人の場合は、原則として、1年相当に換算した金額により判定することとされています。
したがって、設立1期目および2期目の課税売上高が3億円であったとしても、原則的な考えかとしては、これらの期間については消費税の課税もれが生じることとなります。
納税者の立場からすると新規法人を設立して、この2期間をうまく利用しようとするのは当然ともいえますが、租税回避行為とみられうような悪質なケースも見受けられたようで、これに対して網掛けがなされることとなったようです。
もっとも、これ以前に資本金1000万円以上の新設法人については設立1期目から免税事業者の適用はないことと改正されていましたが、資本金1000万円未満の法人および個人事業者については、平成23年度税制改正前は状況に変化はありませんでした。
そこで、平成23年度税制改正により、特定期間による納税義務免除の特例が設けられました。
2.制度内容
特定期間による納税義務免除の特例制度は、原則として前事業年度の当初6ヶ月間の期間(特定期間)で、免税事業者となるか否かを判定することとされています。つまり、原則的な判定方法であれば基準年度で免税事業者と判定されると2年間免税事業者として取り扱われるところ、この特例が適用されると、翌事業年度から課税事業者となることとなります。この特例は平成25年1月1日以後に開始した事業年度(個人の場合はその年)から適用開始となっています。
個人事業者又は法人の特定期間の課税売上高が1000万円超である場合、基準期間の課税売上高が1000万円以下であっても、免税事業者の適用はなく課税事業者として取り扱われます。
ただし、この特例では、特定期間の課税売上高を給与等の金額で判定することができるという取扱いも認められています。これは、中小企業者の特定期間における課税売上高の集計等の事務負担に配慮したもので、売上高と給与等の金額はある程度の相関関係があると考えられること、給与等の金額であれば源泉徴収事務等の関係で把握も容易と考えられることによります。
課税売上高と給与等の金額のいずれを採用するかは任意とされているので、結局のところ特定期間における課税売上高と給与等のいずれかの金額が1000万円以下であれば、この制度の適用はないということになります。
ここでいう給与等には、所得税の課税対象とされる給与、賞与等が該当し、所得税が非課税とされる通勤手当、旅費等は該当しないとされています。また、未払の給与・賞与は含まれません(消基通1-5-23)。
特定期間の判定を行うにあたり、期中設立されたような場合にどのように判定するのかというような点が問題となりますが、この点については機会があれば別の機会に確認したいと思います。