外貨建満期保有目的債券の期末換算処理
満期保有目的債券は取得原価をもって貸借対照評価額とするとされています。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならないとさrています。(金融商品会計基準16項)
つまり、原則として償却原価法を適用する必要はありますが、その他有価証券のような期末の時価評価は不要ということになっています。
したがって、円建ての満期保有目的債券であれば特に考える必要はありませんが、外貨建の満期保有目的債券の場合は期末の換算がどうなるのかが問題となり、これについては外貨建満期保有目的債券の決算時の会計処理については外貨建取引等の会計処理に関する実務指針(会計制度委員会報告第4号)13項で以下のように定められてます。
外貨建満期保有目的債券に償却原価法を適用する場合、当期償却額に係る円換算額と換算差額は次のように算定し、処理する。
① 償却原価法の適用による当期償却額は、外貨建ての当期償却額を期中平均相場により円換算し、利息の調整項目として処理する。
② 為替相場の変動に基づく当期の換算差額は、以下の手順で計算し、為替差損益として処理する。
ア. 外貨建ての償却原価法に基づいて算定された価額(以下「償却原価」という。)を決算時の直物為替相場により円換算した額から取得時(当期取得の場合)の帳簿価額又は前期末の貸借対照表価額を控除する。
イ. アから上記①で算定した額を控除する。
文章で書くとわかりにくいですが、上記の関係を図示すると以下のようになります。
ポイントは、外貨建ベースの取得原価を把握しておく必要があるということだといえます。これが把握できていれば、処理は難しくありませんが、円建の満期保有目的債券に慣れていると、為替レートの変動の関係で比較的大きな金額の為替差損益が生じた場合になんとなく違和感を感じてしまいます。しかしながら、上記のとおり為替差損益が生じるというのは間違いありません。
税務上の取扱いは?
会計上、外貨建満期保有目的債券については決算日レートで換算を行うこととなるのは上記のとおりですが、税務上の法定換算方法は、売買目的外有価証券のうち償還期限及び償還金額の定めがあるものに該当することとなると考えられますので発生時換算法(いわゆる取得時レート)が原則となります。
ただし、償還期限及び償還金額の定めのあるものについては、発生時換算法と期末時換算法のいずれかを選択可能となっていますので、事前(換算方法を採用しようとする事業年度の開始の日の前日まで)に選定に係る届出書を提出することにより会計と同様に期末時換算法(いわゆるCR換算)を採用することも認められます。
逆にいえば、この届出を失念していた場合には、会計と税務で換算方法に差が生じますので、会計上認識された為替差損益について申告調整が必要ということになります。