閉じる
閉じる
閉じる
  1. 18監査事務所が会計士資格を誤表記で有報訂正が必要らしい
  2. 内部統制新基準が2025年3月期より適用に(公開草案)
  3. デューデリジェンス(DD)費用の税務上の取り扱い
  4. テレワークの交通費、所得税の非課税限度額適用の有無は本来の勤務地で判断…
  5. プライム市場上場会社、88.1%が英文招集通知を提供
  6. タクシー、インボイス対応か否かは表示灯での表示を検討?
  7. 副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し
  8. 総会資料の電子提供制度、発送物の主流はアクセス通知+議案等となりそう
  9. 押印後データ交付の場合、作成データのみの保存は不可(伝帳法)
  10. 四半期開示の議論再開(第1回DWG)
閉じる

出る杭はもっと出ろ!

数ヶ月間のリハビリ出勤期間を無給とすることは可能か?

うつ病で休職していた従業員が復職する際にリハビリ出勤期間を設けて復職の可否を判断するということは比較的よく行われていることだと思いますが、このリハビリ出勤期間中の作業に対して、無給としていたことを巡り争われた判例があったので、備忘のため取り上げておきます(WEB労政時報 弁護士が精選! 重要労働判例-第151回 NHK名古屋放送局(リハビリ出勤と最低賃金法)事件)。

NHK名古屋放送局(リハビリ出勤と最低賃金法)事件(名古屋地裁 平成29.3.28判決)というもので、事案の概要は以下の通りです。

被告の職員(従業員)であった原告が、精神疾患による傷病休職の期間が満了したことにより解職となったところ、同期間満了前に精神疾患が治癒していたと主張して、解職が無効であり、被告との間の労働契約が存続しているとして、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、傷病休職中に行った被告のテスト出局により、労働契約上の債務の本旨に従った労務の提供を命じられ、実際に労務の提供を行ったが、テスト出局期間途中でテスト出局が中止され、それにより労務の提供をしなくなったのは被告の帰責事由によるものであるとして、テスト出局開始以後の賃金及びこれに対する遅延損害金を請求するほか、テスト出局の中止や解職に至ったことに違法性があると主張し、不法行為に基づく損害賠償金及びこれに対する遅延損害金を請求するもの。

テスト出局中が無給であることが最低賃金法に違反するかという点について、判決は、まず、本件テスト出局が就業規則上の無給休職取扱い期間中になされたのであることから、その期間中の作業には賃金が支払われないのが原則であると判示しました。

ただし、Xの作業が、Y協会の指揮命令下で行われた労働基準法上の労働、具体的には、「被告のテスト出局が、傷病休職中にものかかわらず。職員に労働契約上の労務の提供を義務付け又は余儀なくするようなものであり、実際にも本件テスト出局中にXが行った作業が労働契約上の労務の提供といえる」場合には、最低賃金法の適用があるから、この点を検討すべきとの判断枠組みが示されています。

上記を単純に解釈すると、労働といえるレベルのものでなければ、最低賃金法の適用はないということことになるといえますが、リハビリ出勤の期間や時間などから自分が担当者であったとすると無給とするのに躊躇しそうな内容もあるので、労政時報のWEB記事で「Xが主張する本件テスト出局の問題点と本判決の判断」としてまとめられていた事項を引用させていただきます。

①テスト出局は、主治医の職場復帰可能との判断が開始の前提となっている。期間が24週間と長期間である。

(裁判所の判断)
一般的なリハビリ勤務と比較して長いことは否定できないが、テスト出局中の作業として軽度のものが想定されていることにも照らすと、制度自体が直ちに労働契約上の労働の提供を義務付けまたは余儀なくするようなものとはいえず、主治医の具体的な判断内容や職員の実際の病態・病状、職場で順応状況によっては柔軟にテスト出局の内容や期間を検討し、場合によっては短期間にできる点を考慮すると、期間の合理性を否定すべきとまではいえない。

②後半の12週間はフルタイムの出局で、かつ、通常の業務を想定した作業が予定されている。

(裁判所の判断)
後半の12週間は職場の実態に合わせて通常業務を想定した作業を行うこととされているが、制度上、作業の成果や責任等が求められるものではない。

③作業は内容は上司が指示することになっている。

(裁判所の判断)
テスト出局はY協会の職場の資源を利用し、その管理課での作業をするものであるから、管理職の指示に従うこと自体は当然である。

④テスト出局は復職判断の重要な考慮要素となるため、復職を希望するものはテスト出局に応じざるを得ず、自由な同意に基づくものではない。

(裁判所の判断)
テスト出局の前提となる傷病休職はそもそも解雇猶予の制度であり、テスト出局が職場復帰援助措置義務に沿う制度である以上、テスト出局の状況が復職の判断材料とされることをもって、テスト出局が制度として労働契約上の労働の提供を義務付けまたは余儀なくするものとはいえない。

⑤傷病手当を受給できることはリハビリ出局を無給とすることを正当化しない。

(裁判所の判断)
健康保険法に基づく保険給付の受給ができることや、テスト出局中交通費も支給されることからすれば、制度設計上、テスト出局中の経済的負担の軽減が図られており、テスト出局が制度として労働契約上の労働の提供を義務付けまたは余儀なくするとの評価につながらない。

次に、運用上の問題点の有無として、以下のように記載されています。

上司からの業務の市議を受けて行い、スピードが要求され、責任も生じるものであった。出勤時間が厳密に運用されていた(Xの主張)。

(裁判所の判断)
Xが実際にニュース制作業務等を担当したニュース内容を見ても、原告に相当のニュース制作作業等の経験があることに照らすと、作業自体にそれほど負担感があるものではない。
確かにXが本件テスト出局中に行ったニュース制作業務等は、実際に放送されていることからしても職員が本来的に業務として行う事の一部を担当したものであるが、実際に行った役割や作業内容が本来Xが果たすべきものと同水準に至っていたとまでは認められない。

うつ病のようなメンタル疾患は安易に復職をみとめると再発して再び休職となる可能性が高いので、リハビリ出社等の期間を比較的長めに設定したほうがよいというのはよく指摘される事項ではありますが、無給期間が最長24週間で、後半の12週間はフルタイムで、かつ、実際に放送されているものもあるという点からすれば労働といわれかねない中で、「労働契約上の労務の提供といえるようなものとは認められない」と判断されている点は興味深いところです。

しかしながら、この事案では、「無給休職扱期間は、基準賃金の 90 又は 95 パーセントが保障される傷病欠勤(4か月)及び傷病休職(1 年 8 か月)の後に設けられており、この間に健康保険法に基づく保険給付の受給ができることや、テスト出局中交通費も支給されることからすれば、制度設計上、テスト出局中の経済的負担の軽減が図られて」おり、休職制度を有する一般的な会社の制度からすると、労働者はかなり手厚く保護されているといえる点にも注意が必要です。

また、「テスト出局を一律 24 週間とすることは、産業医等の復職の可否の判断に必要と考えられる期間としても長すぎるようにも思われる。」ともされている点にも注意が必要です。

この事案は、復職後に期待されるレベルの業務でないとしても、アルバイトくらいの仕事ではあったと思うので、完全に無給というのは労働者にやや酷であると感じますが、リハビリ出勤の制度設計に参考となる事案なので、一度判決文に目を通すとよいのではないかと思います。

関連記事

  1. 高齢化により所得の少ない世帯が増加したというけれど・・・

  2. 定時決定における保険者算定基準の追加

  3. 小規模企業共済制度の改正

  4. 精神障害を事由とする労災申請(その2)

  5. 労働保険の年度更新-そろそろ期限です(7月11日)

  6. 算定・月変実務の変更点(2021年)




カテゴリー

最近の記事

ブログ統計情報

  • 12,946,927 アクセス
ページ上部へ戻る