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粉飾決算をめぐり監査法人に約6億円の損害賠償-プロデュース社事件

T&A master No.741のニュース特集で「プロデュース社の粉飾決算めぐり監査法人に約6億円の賠償命じる」と記事が掲載されていました。

2018年3月19日の東京高裁判決に関するもので、日経新聞でも3月20日に「新潟県長岡市の工作機械メーカー「プロデュース」(破産)の粉飾決算で株価が下落し、損害を受けたのは監査法人に責任があるとして、株主が、粉飾時の監査法人を吸収合併した東陽監査法人(東京)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は20日までに、請求を棄却した一審東京地裁判決を変更し、約6億1760万円の支払いを命じた。」と報道されていましたが、裁判所の判断内容が詳しく紹介されていましたので紹介します。

まず、プロデュース社の事件がどのようなものであったのかですが、同社は電子部品製造装置の開発製造等を行っていた会社で、平成17年12月14日にジャスダックに上場しましたが、上場前より架空の循環取引により売上や経常利益を水増しし、赤字を黒字転換していたとされています。

そして、「プロデュース社の社長らのほか同社の監査を受託していた監査法人の代表社員であった本件公認会計士も粉飾の手口を逐一指南するなどして粉飾決算に積極的に加担していた」とのことです。

有価証券報告書の虚偽記載による刑事事件としては、社長に対して懲役3年、罰金1,000万円の実刑判決、本件会計士に対して懲役3年6ヶ月の実刑判決が下されています。

少し前に不正の発覚の経緯として会計監査人による指摘が一番多かったという内容の記事を紹介しましたが、上記の事案では会計士が粉飾に積極的に加担しているので、当然のことながら会計士の指摘で発覚したのではなく、証券取引等監視委員会の調査で発覚したとのことです。T&A master No.325の記事によれば、監視委員会による、新規上場時に提出された有価証券届出書の虚偽記載に係る「初めての告発事例」とのことです。

粉飾発覚直前の株価が33万4000円であったのに対して、粉飾発覚後は大幅に下落し、最終取引日(平成20年10月24日)の株価は305円となりました。1/100どころか1/1000以下に下落しており、ものすごい下落ですが、これに対し、株主(法人4社、個人225名)が、「同社が有報等に虚偽記載をしたために損害を被ったとして、有報等に係る財務計算書類の監査証明をした粉飾時の監査法人を吸収合併した監査法人に対して損害賠償を求める訴訟を提起した」とのことです。

地裁では、プロデュース社の監査役の賠償責任は認めたものの、株主らの訴えを全部棄却するする判決を下していました。

会計士が積極的に粉飾に関与したとされていながらなぜ一審判決で株主らの主張が退けられたのかですが、東陽監査法人が当該粉飾に関係しているといえるのかが微妙なところだったためのようです。

まず、IPO時に監査を担当していたのは東都監査法人で、その翌年に隆盛監査法人に監査人が変わっています。粉飾に加担したとして実刑判決を受けた会計士はIPO時には東都監査法人の会計士として監査報告書にサインしていますが、翌年には独立して隆盛監査法人を設立し、隆盛監査法人の所属会計士として監査報告書にサインしています。IPO直後に監査法人が変更するのは何かおかしいのですが、サインしている会計士が同じであれば、独立して顧客を取っていたということかなというくらいにしか考えてしまいます。

一方で、東陽監査法人は平成18年(2006年)に東都監査法人を吸収合併しています。

そして、実刑判決をうけた会計士が所属した隆盛監査法人は平成23年11月月30日に東京地裁から破産開始決定を受けており(東京商工リサーチ 2011年12月7日)、早々になくなっています。

このような状況を総合的に考えると、東陽監査法人にそれほど落ち度があるといえるのかは微妙ですが、一方で、サインしていた会計士がおかしかったとしても東都監査法人として粉飾時の監査報告書を提出しており、その監査法人を東陽監査法人が吸収合併しているので、責任を逃れることはできないいわれれば、これこそ合併のデメリットといったところです。

裁判所がどのように判断したのかについては、以下のように記載されています。

プロデュース社が提出した有報等には利益について赤黒転換を行うなどその重要な事項に虚偽記載があったことは明らかであると指摘。そして粉飾時の監査法人を吸収合併した監査法人の責任原因及び免責事由の有無については、吸収合併された粉飾時の監査法人(代表社員・本件公認会計士)が重要事項に虚偽がある財務諸表につき監査証明として無限定適正意見を表明していることから、粉飾時の監査法人及びこれを吸収合併した監査法人は金商法21条、22条及び24条並びに公認会計士法34条の19第4項の規定により、虚偽記載により生じた損害を賠償する責めに任ずるとした。
さらに野山宏裁判長は、粉飾時の監査法人の代表社員であった本件公認会計士がプロデュース社の社長らと共謀して巧妙な手法で巨額の赤黒転換に伴う粉飾決算を実行して有報等の重要事項に虚偽記載をし、無限定適正意見を表明したものであることから、本件公認会計士に行為があったことは明らかであると指摘。控訴審のなかで粉飾時の監査法人が主張した無過失の抗弁は失当であるとしたうえで、粉飾時の監査法人を吸収合併した監査法人の免責を認める余地はないと判断した。
(T&A master No.741 「プロデュース社の粉飾決算めぐり監査法人に約6億円の賠償命じる」)

監査法人への損害賠償から、合併の怖さを改めて確認することになるとは思いませんでしたが、最近では合併している監査法人も比較的よくあるので、第2のモデルケースが登場しないことを祈ります。

最後に、詳細は割愛しますが、この事案における損害賠償額については、株式取得価額自体が損害額と認定されてています。

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