外国人従業員が配偶者が複数いると申告してきたらどうする?
海外に居住している親族であっても、所得者と生計を一にしており、合計所得金額38万円以下等の要件を満たしていれば、控除対象扶養親族一人につき38万円の控除が認められます。
2016年1月以降に扶養控除対象とする国外居住親族の確認が厳格化されるまでは、実在するのかすらよくわからない多数の扶養親族がいるという申告がなされていたというケースもあったようです。
2016年1月以降は親族関係書類および送金関係書類の提出が必要となったことなどにより、不正な申告は減少していると考えられますが、これらの書類を提出して扶養親族であることを示せば、1人当たり38万円(特定扶養親族は1人当たり63万円)の控除が認められます。
さて、ここからが本題ですが、諸外国の中には一夫多妻制が合法で、配偶者が複数いるというケースもあります。一夫多妻が合法であっても、実際に配偶者が複数いるというケースはそれほど多くはないようですが、外国人従業員から配偶者が複数いるという申告があった場合に、配偶者控除はどうなるのかが問題となります。
結論としては、配偶者が複数いても、配偶者控除は38万円のみとなるとのことです(「源泉所得税の誤りが多い事例と判断に迷う事例Q&A 改訂版」事例14参照)。
それでは他の配偶者は、扶養親族と取り扱われるのかというと、扶養親族としても取り扱われないとのことです。
上記のようになる理由は、扶養控除について規定する所得税法84条では以下のように、「その控除対象扶養親族一人につき三十八万円」とされているのに対して、配偶者控除について規定する83条1項では「居住者が控除対象配偶者を有する場合には、・・・三十八万円(その控除対象配偶者が老人控除対象配偶者である場合には、四十八万円)を控除する」と「一人につき」とされていないため、配偶者が何人いても配偶者控除は38万円となるとのことです。
そうであれば、その他の配偶者は扶養親族扱いとなってもよさそうですが、所得税法2条の定義において、扶養親族は「居住者の親族(その居住者の配偶者を除く。)」とされているので、配偶者であれば扶養親族に該当することはないということになるとのことです。
ほぼ問題となることはないと思いますが、年末調整の時期だけに、そんなものかと軽く押さえておくとよいかもしれません。
(扶養控除)
第八四条
居住者が控除対象扶養親族を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から、その控除対象扶養親族一人につき三十八万円(その者が特定扶養親族である場合には六十三万円とし、その者が老人扶養親族である場合には四十八万円とする。)を控除する。
(配偶者控除)
第八三条
居住者が控除対象配偶者を有する場合には、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から三十八万円(その控除対象配偶者が老人控除対象配偶者である場合には、四十八万円)を控除する。
(以下省略)