退職代行業者から従業員が退職したいという旨の連絡が来た場合の対応とは?
労政時報3969号の相談室Q&Aに「退職代行業者から当社の従業員が退職したいと申し出ている旨の連絡が来た場合の対応」というQ&Aが掲載されていました。
労政時報のQ&Aにも登場するくらい一般的になりつつあるのかというのが驚きですが、確かに本人と連絡を取ろうにも連絡が取れず、退職代行業者としか連絡が取れない場合、退職とするにしてもどのような対応が適切なのかは迷うかもしれません。
このQ&Aの回答は、「退職代行業者を通じて本人の真意を確認することや、それが走行しない場合は、自動退職規定の適用や黙示の退職の意思表示があったものと取り扱う方法が考えられる」となっています。
このQ&Aの解説を確認していくと、まず、退職代行業者は法的にどのような位置付けについては、その退職代行業者が弁護士や弁護士法人でない場合は、本人を代理することは非弁行為にあたり禁止されているため、「代理」ではなく、単に本人の意思を届ける「使者」と位置付けられるとされています。
退職代行業者が本人の「使者」にすぎないとすると、本人の意思を確認する必要がありますが、本人と連絡が取れないのでどのような対応をとれば良いのかが問題となります。なお、「退職代行業者から届いた文書の中に、本人への直接のコンタクトを禁じる文言や、退職代行業者宛てに連絡してほしい旨の依頼文言が入っていたとしても、それに拘束力(強制力)はありません」とのことですので、本人と連絡を取ろうとすることは問題ないようです。
このような場合の対応としては、まず、退職代行業者から届いた文書上、退職届が全文直筆で書かれており本人の筆跡であることが確認できたような場合や、本人の実印が捺印され印鑑登録証明書が添付されているような場合は、他に特段不自然な点がない限り本人の真意と確定してよいようです。
そのような書面がない場合は、「退職代行業者に本人からの依頼状況を確認したり、本人の真意を把握できる資料の送付を依頼したり」した上で、それでも本人の真意を確認できない場合は、就業規則上に一定期間無断欠勤が継続した場合の自動退職規定を用いた労働契約の終了を検討したり、そのような規定がない場合は、退職業者からの連絡、無断欠勤、私物の処分状況などを総合的に勘案して、「黙示による退職の意思表示があったものと取り扱うという方法も考えられる」とされています。
なお、無断欠勤が続いているので懲戒解雇という選択肢もありますが、これについては「弁明の機会の付与や、会社による懲戒解雇の意思表示を本人に到達させることが困難であると想定されるため、実務上は得策ではないと考えられます」とされています。
特に後ろめたいことがない普通の会社ほど、退職業者を通じて退職するというようなケースに直面すると、そんな奴は懲戒解雇だ!とやってしまいそうなので、気をつけましょう。