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株主総会参加者の議案への賛否を総会検査役がビデオ判定ー大戸屋HD

ニュース等でご覧になった方もいると思いますが、2020年6月25日に開催された株式会社大戸屋ホールディングスで、同社の筆頭株主である株式会社コロワイドの株主提案が否決されました。

招集通知(事業報告)によれば、株式会社コロワイドは、大戸屋HDの株式の19.15%を保有する筆頭株主で、今回の総会にあたり、コロワイドグループとのシナジーを生み出すため取締役12名の選任を提案していました。
提案理由には、大戸屋HDの経営陣にコロワイドとのM&Aを提案したが初期段階から拒否された旨や、大戸屋HDの株主にコロワイドグループ入りについてのアンケートを実施したところ発送数24,092名(有効回答数18,801名)のうち9割を超える株主から賛同を得たという内容が記載されていました。
また、コロワイドは、株主提案の中で、株主優待についてもコロワイド水準と同程度に見直すことを予定しているとして、現状100株:2500円(3000円:3年以上保有の場合、以下同じ)、500株:6500円(7500円)、1000株:13000円(14000円)を100株5000円、500株40,000円とし、コロワイドグループの店舗で利用も可能する旨が記載されていました。

キャピタルゲインを得ることが株式投資の基本とはいえ、株主優待も考えて株を保有している個人株主も多いと思いますので、上記のような株主優待の拡充は個人株主の賛成を得るには効果的だと考えられます。

上記の他、セントラルキッチン方式の採用を巡って両社に溝があったという報道もなされていますが、最終的には冒頭のとおり株主提案は否決されました。

おおまかな経緯はこのような感じのようですが、本日、大戸屋HDが「当社株主総会における提案株主様の議決権行使について」という適時開示資料を公表しました。

この開示資料の提出理由は、同社が総会後に提出した臨時報告書について、「株主提案の議案(第3号議案「取締役12名選任の件」)の賛成数及び賛成割合について、当社株主様や報道機関の方々よりお問い合わせを頂いていることから、その詳細につきまして以下のとおりご説明いたします」とされています。

問合せが多いとされている臨時報告書の該当部分は以下の様になっています。

前述のとおり、コロワイドの保有株式割合は19.15%であるところ、株主提案である第3号議案についての賛成割合が14%~15%程度になっています。提案した株主は当然賛成するはずなので、賛成割合がコロワイドの持株比率よりも小さくなっていることにより、これはどういうこと???という問合せが殺到したということのようです。

開示資料によれば、結論としては、提案株主が総会当日に自ら提案した議案に対しても拍手しなかったことにより、賛成と取り扱うことができなかったというのが理由となっています

仮にコロワイド分が3号議案に賛成票としてカウントされていても、賛成率が変化するだけで否決されたという事実に変わりはありませんが、コロワイドを代表して大戸屋HDの株主総会に参加していた方がこの取扱いを理解していたのか?は気になります。

適時開示資料によると「ある株主様が議決権を事前に行使した場合であっても、その株主様が株主総会に実際に出席された場合には、出席した時点で事前の議決権行使は無効となり、株主総会の議場において議案に対する意思表示をしていただくことになります」としたうえで、「提案株主様が実際にご出席された上、いずれの議案についても賛成の意思表示である拍手を行わなかったことから、株主提案である第3号議案を含むいずれの提案についても賛成として取り扱うことができませんでした」と記載されています。

株主総会当日の投票については、「株主総会ハンドブック第3版(中村直人著,商事法務)」では以下の様に記載されています(一部抜粋)。

株主総会の決議は、その議案に対する賛成の議決権数がその決議に必要な数に達したことが明白になったときに成立する。このため、総会場における議案の裁決は、通常、拍手や挙手による簡便な方法が採用されている。このような簡便な方法が用いられるのは、総会前日までの議決権行使状況により議案の承認可決が明らかであるか、総会当日に出席した大株主の賛成が確認できれば承認可決となるからである。ただし、最近は、総会当日に出席する大株主の賛成票を勘案しても、議案の承認可決に至らないことが稀にあり、このような場合には、総会場での投票が行われる事がある。総会場での投票方法としては、出席株主が投票用紙に議案の賛否を記載するうえ投票箱に入れる方法やタッチパネルで議案の賛否を入力する方法が考えられる。
(中略)
また、上場会社に臨時報告書による議決権行使結果の開示が義務付けられたことから、総会当日の来場株主の議案に対する賛否を集計して、臨時報告書にも反映しようとする動きが出始めている。

大戸屋HDのケースでは、承認可決となることは事前の議決権行使状況で把握されていたものと考えられます。そして、「ある株主様が議決権を事前に行使した場合であっても」という説明があえてなされていることからコロワイド側は事前に議決権行使書を提出していたのではないかと推測されます。しかしながら、株主総会にも実際に出席したため、臨時報告書に議決権行使結果を記載する必要もあることもあり、コロワイドの出席者が各議案に対して拍手するかどうかを総会検査役(この総会検査役は後述のとおりコロワイド側の要請により選任されたようですが・・・)が注視していたということのようです。

開示資料では「提案株主様の申し立てにより、裁判所により総会検査役(弁護士)が選任されておりました。本株主総会に同席いただいた当該総会検査役によれば、議場における目視での確認に加えてビデオ映像による確認も行ったが、提案株主様による賛成の意思表示(拍手)は確認できなかったとのことです。」とされています。

コロワイド側が潔く負けを認めたという可能性もあるものの、コロワイド側が今後の関係性を根本的に見直すということでなければ、今回の提案にある程度の率の賛成票が投じられたという実績を残しておくデメリットはないと考えられ、この結果はコロワイド側が意図したものではないものと推測します。

コロワイドの株主総会は明日(6月30日)に予定されていますので、真相を明らかにする上でも、「大戸屋HDとしての株主総会において、自らの提案になぜ賛成の意思表示をしなかったのか」という質問がでることを期待します(そのような質問が出ても、質疑応答内容が公表されないと把握できませんが・・・)。

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