社会保険料の標準報酬ー新型コロナ対応で随時改定の特例が認められました
2020年6月25日に日本年金機構のサイト”【事業主の皆さまへ】新型コロナウイルス感染症の影響に伴う休業で著しく報酬が下がった場合においける標準報酬月額の特例改定のご案内”が掲載されました。
一言でまとめると、2等級以上標準報酬月額が下がった場合に、通常4カ月目から改定される随時改定の特例として、2等級以上標準報酬月額が下がった翌月から標準報酬の改定が可能となるという特例です。
「可能となる」だけで、そうしなければならないというわけではない点に注意が必要です。この特例が認められるのは、以下の3つの要件すべてを満たした場合とされています。
- 事業主が新型コロナウイルス感染症の影響により休業(時間単位を含む)させたことにより、急減月(2020年4月から7月までの間の1か月であって、休業により報酬が著しく低下した月として事業主が届け出た月)が生じたこと
- 急減月に支払われた報酬の総額(1か月分)に該当する標準報酬月額が、既に設定されている標準報酬月額に比べて、2等級以上下がったこと
- 特例による改定を行うことについて、本人が書面により同意していること
労働者としては、基本的には社会保険料は安い方がありがたいと思います。しかしながら一方で、老齢厚生年金など厚生年金保険から保険給付を受けることとなった場合のことを考えた場合、保険料の半額は会社が負担してくれているのだから、標準報酬を下げる必要がないのであればそのままの標準報酬で据え置いてもらいたいというようなケースも考えられます。また、健康保険にしても、標準報酬が下がった後で、傷病手当金の支給を受けることとなったような場合を考えると、必ずしも標準報酬が低い方がよいとも限りません。
そのため、特例によって標準報酬の改定を行う場合には、本人の同意が必要ということだと考えられます。
対象となる保険料は2020年4月~7月までの間に休業により報酬等が急減した場合に、その翌月の2020年5月から8月分の保険料が対象となります。6月25日に公表されたものですので、当然のごとく遡及して適用が可能です。ただし、2021年1月末までに届出があったものが特例の対象となると、届出期間が限定されていますので注意が必要です。
また、同一被保険者に対して複数回届出を行うことや、届出後に急減付の選択を変更することはできないとされている点にも注意が必要です。
なお、日本年金機構のパンフレットでは(2021年1月末までは)「遡及して申請が可能ですが、給与事務の複雑化や年末調整等の影響を最小限とするため、改定をしようとする場合はできるだけ速やかに提出をお願いします」とされています。とはいえ、将来の年金などのこともあるので、現時点では原則通りという選択をし、今後の経済状況により、やはり数ヶ月分であっても特例を利用して社会保険料の負担を軽くしたいということも考えられますので、今回原則通りという選択をした会社であっても、対象者がいるケースではこのような特例があるというのは覚えておいて損はないと思います。
最後に、事業主がこの特例を利用するためには本人の同意が必要となるというのは前述のとおりですが、従業員がこの特例を希望した場合、事業主は特例を利用しなければならないのかが問題となります。
この点、日本年金機構のサイトには特段記載がありませんが、要件の1つが「標準報酬月額の特例改定による改定内容に被保険者本人が書面により同意していること」と、事業者が決めた内容に本人が同意しているという方向でのみ記載がされていることからすると、被保険者から希望があったからといって必ずしも事業者が特例を適用しなければならないというわけではないと考えられますが、被保険者からそのような希望があった場合には、年金事務所に確認することをおすすめします。