コプロがプライム市場上場維持基準適合に向けた意志表明を適時開示
2021年5月6日に株式会社コプロ・ホールディングスが「プライム市場上場維持基準への適合に向けた意思表明に関するお知らせ 」という適時開示を行いました。
同社は、2021年4月30日時点の状況を前提とした場合、プライム市場において規定される上場維持基準のうち流通株式時価総額に関する基準を満たさない見込みである旨を述べたうえで、「あらゆるコーポレート・アクションを選択肢として検討し、企業価値向上に資する施策を迅速果断に推進することにより、プライム市場上場維持基準への適合を目指してまいります」との意志表明を行っています。
流通株式時価総額の基準をクリアするには、基本的に流通株式数を増やすか株価を上げるかのいずれか(あるいは両方)を目指すということになると考えられます。同社の直近の株価は以下の様に推移しており、本日終値時点の時価総額は約129億円となっています。今年1月頃の株価水準であれば、基準クリアにかなり近づいていたものと思われますが、現時点ではかなり厳しい状況にあるといえそうです。
この適時開示の目的が株価にプラスの影響を期待したものなのか、役員等のインサイダー取引抵触回避などを目的としたものなのかはわかりませんが、個人的にはこのような適時開示が株価に与える影響はあまりないのではないかと考えています。
コプロ・ホールディングスの場合、現時点の株価と来期の配当予想を基準とすると配当利回は3%を超えており、プライム市場に残れないことによって株価が下落するのであれば、配当目的で購入を検討する価値はあると思いますので、変にプライム市場に残るよりは、スタンダード市場へいってくれた方が投資対象としてはありがたい気すらします。
一方で、現在東証マザーズに上場しているユーザベースは2021年5月14日に開示した「2021年第1四半期決算説明会レポート」おいて、決算説明会時に以下の様な質疑応答があったとしています。
Q5:早期のプライム市場への上場を目指すとのことですが、現状の時価総額が1000億円のラインとの乖離が開いてきているため、このままだと厳しいのではないでしょうか? プライム市場を目指すより先に東証一部への鞍替えを申請することは考えていませんか? この方が得策だと思うのですが、経営陣の方々のこちらに関しての考えをお聞きしたいです。
千葉:
私から回答します。おっしゃる通り、現在時価総額が1000億円を割っておりまして、その条件のままであれば、プライム市場への申請の定義を満たさないということになるのは、ご理解いただいている通りです。
他方で、申請するタイミングで1000億円を超えていれば良いという基準ですので、IRを強化し、今後も株価向上に注力していきたいと考えています。
東証一部への市場変更に関しては、こちらも基準がございまして、どちらも我々がすぐにできる状況ではありませんので、状況を冷静に見定めながら判断していきたいと思っています。現時点では2020年12月期の第4四半期決算時に発表させていただいた通り、プライム市場への申請を目指して、経営陣としては取り組んでいる状況です。
ユーザベースの時価総額は本日現在で約918億円ですので、現在上場している市場が東証一部であれば、一般的にはプライム市場に残れる安全圏に位置している会社であると考えられます。したがって、プライム市場に残ることを最優先するのであれば、東証一部への市場変更を行ったほうがよいのではないかという質問者の考えはよくわかります。
しかしながら、従来、東証マザーズに上場後、時価総額の基準等を満たすのであれば、上場から期間が空かなければ空かないほど東証一部への市場変更は取引所の審査対応の負荷が少なくて済むと言われていましたが、ユーザベース社の場合は、マザーズに上場後4年半程度経過していることに加え、その4年半の間にM&Aなども行っており上場当時とは色々な面で大きく変化していると推測されることから、市場変更とはいえ審査対応は結構な労力を要することになると思われます。
時価総額が300億円程度の東証マザーズの上場会社がプライム市場に上場することを目的とするのであれば、東証一部への市場変更を急いだ方がよいということになりそうですが、時価総額1000億円が見えているという状況の東証マザーズ上場会社の場合、じたばたせずに時価総額1000億を目指すという正攻法も個人的には好感が持てます。
現在の予定では7月9日に、東証から各社に新市場区分でのどの市場に区分されるのかが通知されるとのことですが、経過措置期間も含め、コプラホールディングスのような意志表明がどの程度流行るのか注目です。