改正電子取引制度と仕入れ税額控除
先週と今週の税務通信の税務の動向で改正電子取引制度下における仕入税額控除の疑問点に関する記事が掲載されていました。
2022年1月以降、改正電子取引制度が適用開始となりますが、一方で2023年10月から開始されるインボイス制度開始までは消費税の仕入れ税額控除要件に変更はないため、原則として紙の請求書等の保存が必要となります。
もっとも、以前”改正電子帳簿保存法における電子取引情報保存制度による仕入税額控除に紙は必要?”で記載したとおり、電子取引により仕入先からの請求書等のデータのみを受領し、電子データで保存している場合も、紙の請求書の交付を受けなかった「やむを得ない理由」に該当するとされていますので、この場合は紙の保存は不要となります。
ただし、法定記載事項に加えて、その「やむを得ない理由」及び「課税仕入れの相手方の住所等」を帳簿に記載して保存することが、仕入税額控除の要件とされているため、当該記載が必要となります。
そもそも事務処理として煩雑ですが、この記事では、さらに「また、採用しているシステムによっては、入力できる文字数に制限があるというケースも少なくない」という問題点をあげています。確かに、システムの備考欄などはシステムによって入力可能な文字数にかなりばらつきがあり、このような記載をすることで他に必要な事項を入力することができなくなってしまうというのは実務的に問題があると考えられます。
この解決策として、この記事では「仕入先から受領したのが請求書等の電子データのみであり、紙の請求書等の交付を受けなかったことがわかるのであれば、記載の“簡略化”も可能のようだ」とされています。この場合、記号が何を意味するのかを説明した文書を別途保管しておくという方法が提案されています。
また、「仕入を行う買手自身が作成・交付した仕入明細書等のデータについて相手方(売手)の確認を受け、その仕入明細書等のデータを保存するケース」が「やむを得ない理由」があるといえるのかについても「やむを得ない理由」がある場合に該当すると説明されています。
理由は、”消費税法に規定する「請求書等」には、仕入れを行った者が作成する一定の仕入明細書等も含まれて”いるためとのことです。よって、仕入側が作成する仕入明細書等で確認を受けているようなケースであってもデータでやりとりしている限りにおいて紙で保存する必要はないようです。
税制改正を受けて、電子保存に係るセミナー等も増えてきたようですので、ペーパレス化に向けて真面目に検討してみる価値はあると思います。