短期前払費用の特例における継続要件の留意点
税務通信3673号の税務の動向に「短期前払費用の特例に係る適用上の留意点③」が掲載されていました。今回の記事では「継続要件」について取り上げられていました。
法基通2-2-14では短期前払費用の特例について以下のとおりとなっています。
前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうち当該事業年度終了の時においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下2-2-14において同じ。)の額は、当該事業年度の損金の額に算入されないのであるが、法人が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときは、これを認める。
上記のとおり、短期前払費用の特例は支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する事業年度の損金の額に算入していることが要件とされています。
継続性が求められるのは利益調整を目的とした適用を排除するためで、”税務調査の際に入念に確認される「継続要件」の充足性は、当然のことながら、同特例を適用した事業年度の 前後 の事業年度における経理処理の状況がポイントとなる”とされています。
これに関連して取り上げられていた裁決事例のうちの一つが”同特例の適用事業年度 後の事業年度においては,同特例を継続適用していたにもかかわらず、「継続要件」を充足しないと判断された事例”(大裁(法)平16第65号/平成17年3月23日裁決)でした。
この事案の前提事実は以下の通りとされています。
請求人(3月決算法人)は、平成15年3月31日に支払った平成15年4月分(1か月分)の前払家賃43万8,400円について,短期前払費用の特例を適用し、平成15年3月期に損金算入して申告を行った。平成14年3月29日に支払った平成14年4月分の前払家賃については、平成14年3月期に損金算入していなかった。ただし、平成16年3月期以降においては、同特例を適用した平成15年3月期と同様の処理を行っていた。
審判所は、”直前期(平成14年3月期)においては、前払家賃の支払日の属する事業年度に損金算入していないほか、平成15年3月期において経理処理を変更した「合理的な理由」が認められないため、「継続要件」を充足しない”と判断したとのことです。
確かに、継続性を満たさないというのはその通りなのですが、実務的には事務処理上の便宜から処理を簡便にするため処理を変更したいというようなケースは当然ありえます。そのような場合に、今後は継続して短期前払費用の特例を適用すれば継続要件を満たすのではないかと自分を納得させたくなりますが、それは通らないことがあるという点は注意が必要です。そういった意味では、最初にどのように処理を行うのかの決定が重要ということになります。
とはいえ、短期前払費用の特例を適用するか否かを絶対に変更できないということではなく、処理を変更した合理的な理由があれば変更も容認されるとのことです。「合理的な理由」の例として、上記記事では、「例えば、”契約に基づいた支払方法の変更”などが挙げられる」と述べられています。
これも、こちらから相手に契約変更をもちかけて結果的に変更時に利益が圧縮されたとした場合に合理的な理由と認められるのかは定かではありませんが、例えば毎月払いで支払時に処理していたなんらかの費用について、年払しか認められなくなったので同様に支払時に損金経理したというようなケースでは「合理的な理由」と認めてもらえるかもしれません。
税務調査では指摘しやすい部分だと思いますので、慎重な判断が必要だと思われます。