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副業の事業所得該当判断の金額基準はパブコメ多数で見直し

2022年10月7日に副業収集の所得区分等に関する改正通達が公表されました(「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)(課個2-21ほか2課共同)等)。

8月に意見募集が開始されていた改正案では、副業収入300万円以下の場合には「雑所得(業務に係る雑所得)」に該当する旨が示されており、7000件超の意見が寄せられていたとのことです(税務通信 3724号 税務の動向「国税庁 副業収入等に係る改正所得基通を公表」)。

国税庁から10月7日に公表された”「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募の結果について”では、寄せられた意見の概要として以下のような内容(一部抜粋)が記載されています。

・今回の通達改正は、副業を推進する政府の方針に逆行するものではないか。
・今回の通達改正は、増税ではないか。
・会社を辞めずに起業した者は、給与所得を得つつ、事業収入が 300 万円を超えない場合が多いが、こうした者も業務に係る雑所得に区分されるのか。
・真面目に記帳等をしている者は、収入金額 300 万円以下の副業であっても事業所得と取り扱うべきではないか
・収入金額は業種によって差がでることから、所得金額を基準とすべきである。
・通達では収入金額 300 万円以下の者について雑所得と取り扱うこととしているが、300 万円という基準の根拠が不明である。
・事業所得と業務に係る雑所得の判定について、収入金額 300万円は大きすぎる。

などなどです。

結果的に、改正通達では300万円という基準が削除され、「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。」とされました。

また、上記の原則の上で、”「その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存」があれば概ね事業所得に該当することを示した”(税務通信 同上)とされています。

実際の改正通達では、「業務に係る雑所得の例示」の注(一部抜粋)として、「なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。」と記載されています。

事業所得と認められる一定の事実がある場合を除いて、「その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合」なので、裏を返すと帳簿書類の保存がある場合は、「概ね事業所得に該当する」(税務通信)という解釈になるということのようです。

あくまで社会通念上事業と称するに至る程度で行われているのかで判断されるので、社会通念上事業と称するに至るという判断において一度示された金額基準が気になりますが、同じく今回の改正によって、給与所得と副業による赤字の損益通算に一定の網掛けが行われていることと、国としても本音としては、老後に年金に極力頼らず少しでも稼ぎつづけてもらいたいと考えていると思われることからすれば、一度示された金額基準について過度に気にする必要はないのではないかと思います。

「事業的規模といえない副業収入等を赤字の事業所得として申告し、給与所得等と損益通算する節税スキームが散見」されていたことに対応し、今回の改正通達と同日に公表された「雑所得の範囲の取り扱いに関する所得税基本通達の解説」において以下のとおり述べられています。

その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存している場合であっても、次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断することとなります。
① その所得の収入金額が僅少と認められる場合
例えば、その所得の収入金額が、例年、300 万円以下で主たる収入に対する割合が 10%未満の場合は、「僅少と認められる場合」に該当すると考えられます。
※「例年」とは、概ね3年程度の期間をいいます。
② その所得を得る活動に営利性が認められない場合
その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していない場合は、「営利性が認められない場合」に該当すると考えられます
※「赤字を解消するための取組を実施していない」とは、収入を増加させる、あるいは所得を黒字にするための営業活動等を実施していない場合をいいます。

上記も①、②に該当する場合には「個別に判断」とされていますので、事業所得として認められることはありえるわけですが、雑所得よりにみられる可能性が高いという点は注意が必要です。

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