税効果会計の改正案の全容とは?(その2)
前回に引き続き「税効果会計の改正案の全容」(T&A master No.692)で取り上げられてい内容に基づき、「税効果会計に係る会計基準」等の改正の概要を確認していきます。
3.評価性引当額の内訳に関する注記の主な内容
前回、評価性引当額について注記が必要となる4項目について述べましたので、それぞれの主な内容を確認していきます。
1.評価性引当額の内訳に関する数値情報
これは、繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該繰越欠損金の額が重要であるときは、従来「評価性引当額」の合計額を、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載することが必要となるとのことです。
財務諸表利用者が税負担率の予測及び繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価に資するというのがこの注記の目的とされています。
この注記が行われるようになると、場合によっては会社が来期何かやりそうだなということを予測できるようなケースがでてくるかもしれません。
2.評価性引当額の内訳に関する訂正的な情報
これについては、財務諸表の利用者が評価性引当額の内容を理解し、税負担率に影響が生じている原因の分析に資するように、税負担に重要な変動が生じている場合、当該評価性引当額の変動の主な内容を記載することになるそうです。
前述の1.も同様ですが「重要な」場合に記載が求められるとされていますので、重要性の判断基準をいかに設定するかもポイントとなりそうでう。
3.繰越期限別の税務上の繰越欠損金に係る通知情報
発生原因別の注記として税務上の繰越欠損金の額が重要である場合は、税務上の繰越欠損金に係る数値情報として、繰越期限別に以下の金額を記載することとなるようです。
①税務上の繰越欠損金の額に税率を乗じた額(発生原因別の注記に記載されている額)
②当該税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額
③当該税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額
4.税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報
税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、税務上の繰越欠損金にかかる定性的情報として、当該重要な繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を記載することとなるそうです。
これについては、翌年度の公表業績予想から回収可能だと判断してもらえそうなレベルであれば特に記載は難しくないように思いますが、順調な業績であった会社がたまたま何らかの要因で重要な繰越欠損が生じ、翌期以降複数年で回収可能と判断するような場合は、中期計画を公表しているようなケースであれば比較的説明しやすいですが、そうでない場合は財務諸表の利用者が納得してくれる理由を考えるのは手間かもしれません。
適用時期
今回改正が予定されている事項については、原則として平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されることとなるようです。
ただし、改正項目のうち表示の取扱及び中K事項の取扱は、公表日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末にかかる連結財務諸表及び財務諸表からの早期適用も認められるとのことです。したがって、3月決算会社であれば、今期末から早期適用が可能ということになる見込です。
また、追加される注記事項のうち、繰延税金資産から控除された評価性引当額の合計額以外は、適用初年度の比比較情報を記載しないことができるという経過措置が設けられるとのことです。
子会社から収集すべき情報も追加しなければならないと思われますので、そこそこ面倒ではあると思われます。