残業80時間超の情報、産業医に提供してますか?
改正された労働安全衛生法が2019年4月1日より適用開始となっていますが、今回の改正は結構多岐にわたって行われています。
近年、長時間労働やメンタルヘルス不調などにより、脳・心筋疾患や精神疾患を発症し、労災認定される事案が多く発生したことなどが今回の改正の背景にあるため、改正事項も多岐に及ぶことになったといわれています。
そのような改正事項の一つに、産業医等に対して労働者の健康管理等に必要な情報を提供することが義務づけられたというものがあります。具体的には、労働者の労総時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として、以下の情報を遅滞なく、または速やかに提供しなければならないとされています(労働安全衛生法13条4項)。
- ①健康診断、②長時間労働に対する面接指導、③ストレスチェックに基づく面接指導実施後の既に講じた措置または講じようとする措置の内容に関する情報(措置を講じない場合は、その旨・その理由)
- 時間外・休日労働が1か月当たり80時間を超えた労働者の指名・当該労働者に係る当該労働者の指名・当該労働者に係る当該超えた時間に関する情報
- 労働者の業務に関する情報であって産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの
というわけで、1か月80時間以上の残業を行っている労働者がいれば、産業医に上記の情報を提供する必要があるとされています。なお、ここでいう労働者には、高度プロフェッショナル制度の対象者は含まれませんが、いわゆる管理監督者は含まれているという点に注意が必要です。
管理監督者以外の労働者については、気を付けていても管理監督者で80時間超が複数名該当するというようなことは十分考えられます。
なお、時間外・休日労働が1か月当たり80時間を超えた長時間労働者の面接指導の申出を適切に行わせるため、今回の改正では、当該超えた時間の算定を行ってから(おおむね2週間以内)、労働時間に関する情報を労働者へ通知する義務が課せられています(安衛則52条の2第3項)。
中にはそんな通知もらっていぞと感じる方もいるかもしれませんが、この時間の通知については、給与明細に時間外・休日労働時間数が記載されている場合には、これをもって労働時間に関する情報の通知としても差し支えないとされています。
管理監督者の方の場合、深夜業分は割増賃金の対象となりますが、普通の時間外手当は対象外となっているのが普通ですので、給与明細なんてみないよという方もいるかもしれません。また、給与明細を見て、時間が記載されていても、自分が面接指導の申出をできるということが、わからないじゃないかと感じる方もいるかもしれません。
この点、産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務の具体的内容、産業医による健康相談の申し出の方法および産業医による労働者の心身の状態に関する情報の取り扱いの方法などを、「常時各作業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けること」等の方法により、労働者に周知しなければならないとされています(労安法101条2項、3項、安衛則98条の2)。
ちきんと考えられて法律は作られているということですね。きちんと対応しましょう。