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雇用契約と業務委託契約(その2)

前回のエントリでは、雇用契約と業務委託契約の違いを確認し、従来雇用関係にあった従業員と「業務委託契約」と締結したとしても、変更内容が出社日数およびそれに伴う給料の減額だけであり、それ以外は従来となんら変化していないような場合には雇用関係にあるものと取り扱われる可能性があるとしました。

それでは、上記のような場合に雇用契約ではなく真に業務委託契約とされるのはどんなケースかを考えてみます。両者の区分をややこしくしているのは、仕事というものは一定の拘束を伴うものであるので、それが業務の性質上当然に生ずる拘束か、それとも「指揮命令下の労働」を意味するのかが微妙なためです。

つまり、従来雇用関係にあった従業員と「業務委託契約」を締結し一定の管理職業務を委託しようとしたような場合、その業務の性質上、勤務場所は限定されるし、勤務時間も従業員と変わらないということが起こり得ます。

このようなケースにおいて、業務委託契約(委任)性を強めるものとして考えられるのは、やはり第1に報酬の金額であるように思います。雇用契約にある従業員と業務委託契約関係にある受託者を比べると、業務委託契約関係にある受託者の方が契約の継続等において不安定な立場におかれるため報酬はそれなりに高額になるのが通常です。

このほか、週3日の契約であれば出社日が受託者に委ねられているというような事実も補完的な要因となると考えられます。もっとも、アルバイトでもシフトを自分で選べることがあるので出社日を選択できるだけで雇用契約ではないということにはならないと考えられます。

以下、雇用関係にあるとされるのか問題となりそうな具体例をいくつか紹介します。

1.外勤労働者

保険会社の外交員や電力・ガス会社の検針員等の外勤労働者は、請負又は委任形式で契約を締結されることが多く、勤務形態としても労働時間・勤務場所の拘束が少なく、報酬も歩合制や出来高制で支払われることが多いようでうす。実態がこのようであれば、請負又は委任と考えられる一方で、担当ルートや地区が指定され、業務遂行過程で自由裁量性が乏しく、出勤時間を拘束され、会社の指示に従って就労しているような場合には労働者とされます。

参考となる判例としては、九州電力事件(福岡地小倉支 昭50.2.25 昭和46年(ワ)617号)があります。これは、委託検診契約に基づく電力会社の委託検診員が、検診カードの紛失、検診業務の不履行等を理由として、当該契約を解除されたので委託検診契約は労働契約であり、本件解雇は無効であるとして、被告会社の検診員としての地位確認および賃金支払を請求した事件です。結果的に、この請求は棄却されていますが、判決理由において「労務提供の形態を実質的に考察して、使用従属関係が認められる場合には、たとえ契約の形式が請負、委任等の要素を含むものであっても、これを労働契約として把握し、その従属的地位にある当事者には、労働基準法上の労働者の地位を承認すべきものと解せられる」という解釈が示されています。

2.専門業務従事者

技術者・研究者のように専門的知識や能力を擁して業務に従事する者は、業務遂行上広範な裁量を認められ、業務遂行上の具体的指揮命令を受けないことがあります。しかしながら、上記のような者であっても、業務内容に関する基本的指示を受けたり、出退勤管理や労働時間の拘束を受けていれば「指揮命令下の労働」にあるものとして労働者性が認められます。

3.従業員兼取締役

原則的に、会社の機関としての業務執行を決定する取締役会の構成員であり、会社との関係は委任契約関係にあります(会社法第330条)。しかしながら、日本では業務執行権限を有していない取締役(代表権を有していない取締役)が、業務執行以外の各種事務を担当することが多い。このような場合においては、労働者性が認められる可能性があります。

判例としては、定款や取締役会における業務執行権限付与の事実がなく、取締役が代表者の指示のもとで業務を担当している場合に労働者性を認めた例と、常務又は代表取締役として業務執行を行ってきた者につき、会社経営を統括する業務執行と指揮監督を行い、報酬もそれに見合うものとして高額に設定されていることを理由に労働者性を否定した例の両方があります。

労働者と認められるか否かは業務執行権限の有無・範囲に関する事実関係に大きく影響されます。

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