一般事業会社が貸手として貸出コミットメント契約を締結していた場合の開示は?
今回は、一般の事業会社が貸手側として貸出コミットメント契約を締結していたらどうなるのかについて考えてみます。
「金融商品会計に関する実務指針」第139項では、「当座貸越契約(これに準ずる契約を含む。)及び貸出コミットメントについて、貸手である金融機関等は、その旨及び極度額又は貸出コミットメントの額から借手の実行残高を差し引いた額を注記する。(以下省略)」とされています。
したがって貸手側は一定の注記が必要となりそうですが、「金融機関等」とされているので、一般事業会社にも適用されるのかが問題となります。この点については、「貸手の信用リスク管理上、与信として扱われるほか、これらの契約は貸手の将来のキャッシュ・フローに影響を与える可能性があるため」金融商品会計基準が貸出コミットメントを対象としているということからすれば、貸手が一般事業会社であったとしても状況は同じであるため注記が必要となると考えるのが自然だと思います。
上記のとおり、「金融商品会計に関する実務指針」では貸手の貸出コミットメントについて「注記する」となっているので開示が必須という表現と読めますが、一方で財規上は貸出コミットメントについて直接開示を要求している条文は見当たりません。ただし、貸出コミットメントが「利害関係人が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる事項」に該当するとすれば、追加情報の注記として「注記しなければならない」(財規第8条の5)ということになります。
このように金商法の開示において、貸手の貸出コミットメントはやや微妙な立場にありますが、実務上は貸借対照表関係の注記として開示されていることが多くなっています。ただし、ここで「多い」と言っているのは借手側の注記で、一般事業会社が貸手の貸出コミットメントを注記している事例があるのかを探してみることにしました。
検索してみたところ、非連結子会社などグループ内の会社との貸出コミットメントを開示している一般事業会社がいくつか見つかりました。以下で3社ほど開示例を載せておきます。
1.㈱日本製紙グループ本社(2012年3月期)
2.スターゼン㈱(2012年3月期)-卸売業
3.㈱アイ・テック-卸売業
上記からしても、貸出コミットメントが存在すれば一般事業会社といえども開示することになる可能性が高いと言えそうです。
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