単体開示の簡素化(その2)-平成26年3月期より
”単体開示の簡素化(その1)-平成26年3月期より”の続きで、連結財務諸表作成会社で認められることになる単体開示の簡素化の内容の確認です。
連結財務諸表作成会社における単会開示の簡素化は、大きく以下の二つに分けられるといえます。
①会社法で要求される水準での開示の容認
②連結財務諸表で注記している注記項目の単体開示の削減
1.会社法で要求される水準での開示の容認
今回の財規の改正により「特例財務諸表提出会社」というものが新たに定義されました。、特例財務諸表提出会社とは、連結財務諸表を作成している会計監査人設置会社のことを意味します。厳密には、財規2条に掲げる別記事業を営む株式会社又は指定会社は除かれますが、一般事業会社で考えると、金商法上連結財務諸表を作成している会社で、会社法上の会計監査人設置会社が特例財務諸表提出会社ということになると考えておけばよいと思います。
「特例財務諸表提出会社」に該当する場合は、財規で新たに新設された「第七章 特例財務諸表提出会社の財務諸表」(127条、128条)により会社法で要求される水準の開示とすることができるとされています。
(1)新様式の追加
会社法で要求される水準を意図した以下の様式が新たに追加されています。
財務諸表 | 新様式 |
---|---|
貸借対照表 | 様式第五号の二 |
損益計算書 | 様式第六号の二 |
株主資本等変動計算書 | 様式第七号の二 |
有形固定資産等明細書 | 様式第十一号の二 |
引当金明細表 | 様式第十四号の二 |
例えば、追加された貸借対照表の様式(一部)は以下のようになっています。
現行の様式第五号と比較すると、表示されている科目数が少なくなっています。また、有形固定資産については減価償却累計額が様式第5号では項目別の間接控除方式となっているのに対して、様式第五号の二では直接控除方式となっています。
様式で示されている方法での開示がスタンダードであると考えると、開示が簡素化されていることがよくわかります。
次に、損益計算書の様式(一部)を確認すると以下のようになっています。
売上原価の内訳が明示されず、販管費もワンラインで開示することが前提となっており、現行の様式六号と比較すると簡素な開示となっています。
次に追加された有形固定資産等明細表の様式は以下のようになっています。
上記だけだと簡素化されているのがわかりにくいかもしれませんが、記載上の注意として「4.当期首残高又は当期末残高について、取得価額により記載する場合には、その旨を記載すること」とされています。
つまり、現行の様式十一号では「当期首残高」「当期増加額」等について取得原価での記載が求められている一方で、様式十一号の二の記載は帳簿価額による記載が原則となっています。
もっとも、有報作成会社が減価償却累計額を直接減額方式で記帳していることは少ないのではないかと考えられますので、帳簿価額での記載の方がかえって面倒であるということもあるように思いますので、簡素化されているといえるのかは微妙なところではないでしょうか。
最後に引当金の明細は以下の様式が追加されています。
追加された様式では当期減少額を「目的使用」と「その他」に区分することが要求されていません。当期減少額を「目的使用」と「その他」に分けるのは簡単なようで結構手間がかかったりするのでこれは実務的にはありがたいのではないかと思います。
(2)注記水準の簡素化
以下の注記項目については、会社計算規則で要求される注記をすることが認められるようになりました(財規128条2項)。
連結財務諸表で注記している注記項目の単体開示の削減については次回以降とします。
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