平成28年度税制改正による国税通則法の改正内容
平成28年度税制改正により国税通則法が大幅に改正されることになるそうです。
普通に納税している会社(または個人)にとっては、それほど大きな影響はないように感じますが、一部の納税者にとっては大きな影響がある改正内容となっています。
大きな改正点としては以下の二つとなります。
- 事前通知後の修正申告に対するペナルティの強化
- 仮装隠ぺいや無申告を繰り返す悪質なケースに対するペナルティ強化
1.事前通知後の修正申告に対するペナルティの強化
現行の国税通則法においては、修正申告書の提出が「更正があるべきことを予知してされたものではない場合」には課されないことになっています(国税通則法65条⑤)。
国税通則法上(74条の9①)、調査の事前通知が税務署長の義務とされている一方で、「臨場のための一時の連絡(事前通知)を行った段階で修正申告書が提出された場合」は、上記でいうところの「更正があるべきことを予知してされたもの」には該当しないとされています。
このような取り扱いを踏まえて、調査が実施されれば更正を受ける可能性があることを認識していながら過少申告を行い、事前通知があった時点で修正申告を行うというようなことが多く発生してたとのことです。
このような事態を防止するため、平成28年度税制改正では、「事前通知の連絡を受けてから更正がるべきことを予知するまでの期間」については、ペナルティが強化されることになっています。
現行法では上記のようなケース(事前通知後更正予知までの期間)におけるペナルティは、過少申告の場合は0%となっていますが、改正案では過少申告の場合であっても5%とペナルティの強化が図られることになっています。
一方、無申告の場合についても、現行法では同様の考え方により、事前通知後更正予知までの期間に修正申告を実施した場合にはペナルティが5%に軽減されています(原則は、納税すべき税額が50万円までは15%、50万円を超える部分は20%)。
無申告の場合についても、今回の改正により事前通知後は更正予知前であっても、税額50万円までは10%、50万円を超える部分は15%のペナルティが課せられることとなります。
2.仮装隠ぺいや無申告を繰り返す悪質なケースに対するペナルティ強化
重加算税は現行法においてもかなり重いペナルティです。すなわち、「過少申告加算税に代えて課す場合」と「不納付加算税に代えて課す場合」は35%、「無申告加算税に代えて課す場合」は40%となっています。
このように重いペナルティにもかかわらず、短期間で仮装隠ぺいを繰り返し、再度重加算税を課せられるというケースも相当数あったそうです。そこで、平成28年度税制改正では、重加算税を受けた者が、当該処分から5年の間に再度仮装・隠ぺいによる過少申告、不納付、無申告を繰り返した場合に10%の税率を加重する措置を講じるとされています。
したがって、「過少申告加算税に代えて課す場合」と「不納付加算税に代えて課す場合」は45%、「無申告加算税に代えて課す場合」は50%が課せられることになります。
現行の35%、あるいは40%でも十分高い税率なので、この税率で無申告等を繰り返す納税者に対して、ペナルティを10%引き上げることで大きな効果が見込めるのかは個人的には疑問ですが、とはいえ、きちんと納税している納税者のためにも悪質なケースでのペナルティを強化するのはよいと思います。