事業年度が1年未満の場合の減価償却限度額
会社の新規設立や決算期変更によって、事業年度が1年未満の場合に、法人税における減価償却限度額はどのように計算されるのかについてです。
定率法の場合、会計上、普通に考えると期首帳簿価額(ないし取得価額)×償却率×事業年度の月数/12で償却費を計算するように思えます。
平成19年4月1日以降取得資産の減価償却費については、法人税法上の計算方法も基本的には同様の考え方によっていると考えられますが、平成19年3月31日以前取得資産の定率法による減価償却については少々異なった計算方法になっています。
平成19年3月31日以前に取得した資産の旧定率法による減価償却については、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令 」の第4条2項により、以下のように減価償却限度額が計算されます。
①定率法
平成19年3月31日以前取得資産の定率法の場合は、まず適用すべき耐用年数を算定し、それから償却限度額を計算するというステップを踏みます。
(1)耐用年数の改定
法定耐用年数×12/その事業年度の月数=改定耐用年数(1年未満切捨)
*事業年度の月数において一月に満たない月がある場合は1月とされます。
(2)償却限度額
取得価額×改定耐用年数の旧定率法償却率×事業供用期間の月数/その事業年度の月数
例えば、決算期を12月末から3月末に変更し、事業年度が3カ月であった場合の、耐用年数5年の資産については以下のようになります。
適用する耐用年数の算定
5年(耐用年数)×12÷3(事業年度の月数)=20年
よって、適用する償却率は旧定率法の20年の償却率である0.109を使用します。
対象資産の帳簿価額が 100万円であったとすると、償却限度額は
100万円×0.109×3カ月/3カ月=109,000円となります。
仮に、旧定率法の償却率0.369を使用したとすると 償却限度額は、
100万円×0.369× 3カ月/12ヶ月=92,250円となり、上記の金額と異なる結果となってしまいますので注意が必要です。
ちなみに、定額法の場合は以下のように計算されます。
②定額法
(1)償却率の改定
旧定額法償却率×その事業年度の月数/12=改定償却率(小数点以下3位未満切上)
(2)償却限度額
取得価額×0.9×改定償却率×事業供用期間の月数/その事業年度の月数
さらに、平成19年4月1日以後に取得された減価償却資産については、定額法、定率法ともに以下のように計算されます。
(1)償却率の改定
償却率×その事業年度の月数/12=改定償却率(小数点以下3位未満切上)
(2)償却限度額
取得価額×改定償却率×事業供用期間の月数/その事業年度の月数
法人税法上の償却限度額は上記により計算されますが、20日決算を月末決算に変更したようなケースにおいて会計上の償却費はどのように考えるべきなのかが問題となります。
例えば従来、4月20日決算であった会社が12月末日に決算期を変更した場合、変更期の事業年度は8カ月10日決算となり、1月未満の端数は1月とみなされることから税法上の償却額を計算するときは9カ月がベースとなります。
一方で前期から考えると会計上は4月1日~20日分の償却費は計上済みであり、税法上の計算によるとこの20日分が再度償却費に計上されてしまうためこれでいいのかという問題があります。
理論的には二重に計上されるのはおかしいと考えられますが、新規取得資産については月中に利用を開始すれば一月分の償却費を計上するのが一般的だと思いますので、それと同様に考えて 実務上は税法上の償却計算にあわせてしまうということになるものと考えられます。
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