平成23 年度税制改正大綱-その2
前回に引き続き、「平成23 年度税制改正大綱」の法人税改正の内容についてです。今回の法人税改正の方向性を再度掲げておくと以下のとおりです。
①法人実効税率の引き下げ
②中小法人に対する軽減税率の引き下げ
③雇用促進税制
④環境関連促進税制
⑤総合特区制度・アジア拠点化推進のための税制
⑥租税特別措置(国税)の見直し
今回は、このうち①と②に関わる項目についてです。
「平成23 年度税制改正大綱」のとおり税法が改正されたとすると、平成23年4月1日以後に開始する事業年度から法人税率が以下のように改正されることになります。
カッコ内の税率は租税特別措置法によって軽減されている(されることになる)税率です。
新税率が適用されるのは、平成23年4月1日以後に開始する事業年度からなので、3月決算以外の会社は決算期変更すればそれだけ早くメリットを受けられるということですね。手間を考えるとそれほどメリットがあるかはわかりませんが・・・
会計に与える影響を考えると、この改正税法が3月末までに(無事?)公布されたとすると、適用時期が平成23年4月1日以後に開始する事業年度からであっても3月決算の会社の繰延税金資産・負債の計算に影響が生じます。
税効果会計に係る会計基準第二の二2では、「繰延税金資産または繰延税金負債の金額は,回収または支払が行われると見込まれる期の税率に基づいて計算するものとする。」とされています。
また、「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第10号)19項では「税効果会計に適用される税率が変更された場合には,決算日現在における改正後の税率を用いて過年度に計上された繰延税金資産および繰延税金負債の金額を修正する(税効果会計基準注解(注6))。税率の変更が行われた結果生じた繰延税金資産および繰延税金負債の修正差額は,損益計算書上,税率変更に係る改正税法が公布された日を含む年度の法人税等調整額に加減して処理する(税効果会計基準注解(注6)前段)。
ただし,資産または負債の評価替えにより生じた評価差額が直接純資産の部に計上される場合において,当該評価差額に係る繰延税金資産および繰延税金負債の金額を修正したときは,修正差額を評価差額に加減して処理するものとする(税効果会計基準注解(注7)ただし書)。」とされています。
したがって、繰延税金資産が計上されている会社においては、一時差異の金額を一定と仮定すれば繰延税金資産の計上額が減少し、その分税金費用(法人税等調整額)が増加することになります。
また、「税効果会計」の注記として以下の事項を開示する必要があります。
1)税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正された旨
2)その影響額
ちなみに、法人税の公布が決算日後となった場合には、会計処理は不要ですが、その内容と影響額を注記する必要があります。
今回の法人税改正は、大綱によれば「デフレ脱却と雇用拡大を最優先して、「ペイアズユーゴー原則」との関係では今回の税制改正による財源の確保は十分でありませんが、思い切った引下げ措置を講ずることにし」たとのことで、相当な覚悟を持って実施しようとしているという感じであるが、果たして効果があるのだろうか?
そもそも赤字の会社には恩恵はないし、黒字の会社であっても一般的には単に資金をプールして終わりではなかろうか。一方で高額所得者に限られるとはいえ、所得税は給与所得控除の引き下げにより増税傾向にある。対象が給与所得1,500万円以上というレベルに設定されているので、世論うけする感じはするが、金がある人に使ってもらうほうが経済は活性化するのではないかというのが私の感想です。
設備投資を促進するのであれば、法人税率はそのままでも、耐用根数を短縮するとか、税額控除を大きく認めるとかするほうが効果があるのではないかと思います。
長くなりましたので、法人税制に係る減価償却等については次回以降にします。
日々成長