増税なき復興債発行の可否について(その1)
復興財源としての消費税アップについてのエントリに対してコメントを頂いたので、増税しないで復興債を発行することの可否を考えてみたいと思います。
そもそも、発行額がいくらになるかはいまだよくわかりませんが、報道をみていると民主党は最終的には「10兆円以上」を想定しているようなので、とりあえず12兆円と想定して考えてみます。
また、増税しないで、復興債を発行した場合、通常の国債と同様に60年償還ルールに基づく定率繰入れにより60年かけて一般財源で償還すると仮定します。
現在の10年国債の利率が1.2%程度なので、1.2%で国債を発行し、幸か不幸か60年間1.2%の利率で借換が可能であったとすると、各期間における支払額は以下のようになると考えられます。
60年間の支出額合計は当初発行額12兆円に対して、約17兆円と計算されます。
ただし、財務省の公表している国債金利についてのデータから過去の推移をみると以下のようになります。以下のグラフは10年国債の金利(ただし、1986年までは10年もののデータがなかったので9年ものの率を使用し、各年の1月最初の営業日の利率を採用しています)の推移を表したものです。
最近10年くらいは国債の金利がものすごく低い水準になっていますが、2007年の1月4日には1.716%、1999年1月4日には2.093%であったことからすると1.2%で60年間推移するとするのは現実的ではないと思います。仮に60年間この金利で推移したとすると、問題だといわれているデフレが60年間続くということだと思いますので、日本の財政に問題がないと考えている人も、さすがにまずいことになると考えるレベルではないかと思います。
そこで仮に、10年後の借換時に金利が2%に上昇しており、残り50年間は2%で推移したとして計算すると以下のようになります。
返済合計額は約19.5兆円と約2.5兆円増加します。
財務省のデータによると、2011年3月31日時点の30年物の国債利回りは2.179%、40年物の国債の利回りは2.319%なので、仮に60年国債というものを発行したとすると、債券バブルといわれる今であれば2.8%位で発行できるのではないかと思います。
仮に2.8%で60年国債を発行した場合の支出額は以下のように計算されます。ただし、10年毎に6分の1を繰り上げ償還するという前提で計算しています。
返済合計額は約23.8兆円となります。ちなみに60年後に一括返済で計算すると以下のとおり返済合計額は約32兆円となります。金利って怖いですね・・・
上記のどのレベルで考えるかですが、通常借金するときにあまり楽観的な返済プランは立てないと思いますので、全期間2.8%(10年毎に6分の1ずつ返済)という前提で考えたいと思います。
この水準で考えると、1年当たり3,960億円(237,600÷60年)の財源が必要となる計算となります。
とりあえず、1年あたりに必要な財源の試算ができましたが、少し長くなったので続きは次回にします。
日々成長。