災害損失特別勘定の損金算入-3月決算の税効果に注意(国税庁4月20日通達)
国税庁から4月20日付で、「東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて(法令解釈通達)」(平成23年4月18日付課法2-3、課審5-5、査調4-3)(以下「通達」)及び「東日本大震災関係諸費用(災害損失特別勘定など) に関する法人税の取扱いに係る質疑応答事例」(以下「事例」)が公表されました。
今回の通達で最も影響があると思われるのは災害損失特別勘定への繰入額の損金算入ですが、今回の通達は、阪神・淡路大震災の際の取扱い(平成7年2月27日付課法2-1他)をベースにしており、災害損失特別勘定への繰入要件など基本的な考え方は変わっていないということです。
同通達では、「法人が,災害のあった日の属する事業年度等(以下「被災事業年度等」という。)において,被災資産の修繕等のために要する費用の見積額として次の(1)又は(2)に掲げる金額のうちいずれか多い金額の合計額(当該被災資産に係る保険金,損害賠償金,補助金その他これらに類するもの(以下「保険金等」という。)により補填される金額がある場合には,当該金額の合計額を控除した残額)以下の金額を災害損失特別勘定として経理したときは,その災害損失特別勘定として経理した金額は,当該被災事業年度等の所得の金額(連結所得の金額を含む。以下同じ。)の計算上,損金の額に算入する。」と定められています。
そして、繰入限度額を計算するための上記(1)および(2)については以下のようになっています。
(1)被災資産(法人の有する棚卸資産及び固定資産(←通達の被災資産の定義によります)。その被害に基づき評価損を計上したものを除く。)の被災事業年度等終了の日における価額がその帳簿価額に満たない場合のその差額に相当する金額
⇒要は、「帳簿価額-被災資産の被災事業年度終了日の時価」と考えればよいと思います。
(2)被災資産について,災害のあった日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる次に掲げる費用の見積額(被災事業年度等終了の日の翌日以後に支出すると見込まれるものに限る。)
① 被災資産の取壊し又は除去のために要する費用
② 被災資産の原状回復のために要する費用(被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事,排水又は土砂崩れの防止等のために支出する費用を含む。)
③ 土砂その他の障害物の除去に要する費用その他これらに類する費用
④ 被災資産の損壊又は価値の減少を防止するために要する費用
そして、「災害のあった日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる次に掲げる費用の見積額」については、事例Q10では「災害損失特別勘定の繰入れの対象となる「災害のあった日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる修繕費用等」は、あくまでも「見込まれる」ものをいいますので、暫定的な修繕計画に基づく見込額でも差し支えありません。」とされており、損金算入の要件はかなり緩和されているといえます。
なお、当該損金算入は基本的に申告調整で損金算入することは認められませんが、事例Q2によると、「3月決算法人で、今回の費用通達の公表時に、既に決算手続が終了しており、災害損失特別勘定の損金経理をできなかった等やむを得ない事情がある場合には、特例的に申告調整での損金算入を認めることとしています」とありますので、上記のようなケースに該当すれば申告調整でも損金算入可能ということになります。
今回の震災で決算発表の延期を決定している会社は申告調整ではなく、損金算入が必要になる可能性が高いように思います。
会計に与える影響としては、引当金に対する税効果があります。この通達までは、災害損失引当金に対して税効果(繰延税金資産)をとっていたケースが想定されますが、上記通達によって3月期に損金算入が可能となる部分については一時差異に該当しないため繰延税金資産の計上額を取り崩さなければならない可能性があります。
最後になりますが、補修義務のない賃借資産を補修したような場合に、その補修に要した費用を修繕費として経理した場合は、損金算入することができるということも定められています(通達9)。本来であれば、寄附金認定等されそうですが、貸手に補修する資力がないような場合に事業の継続が不可能になるような事態を避けるための特例だと言えます。
通達・事例のURL(国税庁HP)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/110418/hojin_atsukai.pdf
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h23/jishin/pdf/hojin_FAQ.pdf
日々成長。