計画停電と休日振替
厚生労働省労働基準局からの通達により、「計画停電の時間帯における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として労働基準法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しない」ため、労働者からすればこの間の休業手当はもらえません。
ここ2,3日は落ち着いていますが、夏に向けて電力消費量が増加していくことが見込まれるため今後も計画停電による休業が発生する可能性は高いと考えられます。
まだ震災から20日程度の実績しかありませんが、土日は電力の大口利用者が営業していないこと等により停電が見送られる傾向があるようです。
だとすれば、通常であれば土日を休日としている工場等は、土日に仕事をして、平日休みに振り替えるということを検討する余地があります。
前述の通り、電力が供給されないことを原因として休業しても、労働者は休業手当をもらえませんし、事業者も営業できなければ人件費以外の固定費で損失が生じるため、両者の観点から営業を選択したほうがメリットがあるためです。
そこで、休日振替について労基法の観点からの注意点をまとめておきます。
(1)休日振替を実施するための要件
①就業規則に「勤務に必要がある場合には、他の日に振り替えることができる」旨を記載していること。
②4週4日の休日を確保した上で、振替日を特定すること
③遅くとも前日までに本人に通知する。
①については、休日に関する事項は就業規則の絶対的記載事項であるため振替についても記載がなければ振替を会社が一方的に行うことはできないという意味です。就業規則に記載がない場合は、個々の労働者の同意があれば振替は可能となります。今回のケースでは、労働者も給料がもらえなければ困るので就業規則に休日振替の項目がなくても同意を得られると思いますが、仮にそのような定めがない場合にはこの機に就業規則の見直しをされた方が良いと思います。
②については、通常土日休みであった会社が休日をずらすだけであれば、それほど問題になることはないと思いますが、一応気をつける必要はあります。
なお、所定の曜日が休みの場合は、一週間の起算日を定めていないことも多いと思いますが、行政解釈により「一週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいう」(昭和六三年一月一日基発第一号、婦発第一号)とされていますので、参考までに記載しておきます。
上記「昭和六三年一月一日基発第一号、婦発第一号」の全文は下記(厚生労働省HP)で参照可能です
③については、「遅くとも前日」とされていますが、労働者側からすれば、やはり1週間位前には言ってもらいたいところだと思います。変なところで労働者のモチベーションを下げてしまってはもったいないので、極力早く振替日を決定して通知するという運用が必要だと考えられます。,/p>
(2)割増賃金との関係
休日振替は、労働義務のない休日を労働義務のある労働日とあらかじめ振り替える(交換する)ことで、休日であった日は「労働日」に、労働日であった日は「休日」に変更になります。
したがって、振替により「労働日」となった当初休日の労働は割増賃金の対象とはならず、逆に「休日」となった当初労働日に労働したとすれば、休日労働として割増賃金の対象となります。
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