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出る杭はもっと出ろ!

過年度遡及修正と各法制度との関係(その3)

今回は「過年度遡及修正と各法制度との関係(その2)」で書き残した、過去の誤謬による過年度遡及修正と会社法の関係についてです。

繰り返しになりますが、過去の誤謬による過年度遡及修正の場合は、「法制度の遵守に問題があるという点が会計方針の変更による遡及修正の場合と本質的に異なります。

公開準備作業を行っていると、特別情報として開示される年度分については、主に税務目的で作成された財務諸表を企業会計ベースの財務諸表に修正するというような作業が行われることが一般的です。

この場合、計算書類と金商法ベースの財務諸表で不一致が生じるのはおかしいので過年度の計算書類を修正して過年度の計算書類についても株主総会等の承認を受けるということがしばしば行われます。

過去のものを修正するのだから再度承認をもらったほうがいいと直観的には思いますが、様々な事情(外部株主に対す面子など)により過年度の計算書類について株主総会にかけたくないということもあり得ますので、会社法上、過年度の計算書類について株主総会等の承認を受ける必要があるかどうかが問題となります。

この点、従来は前期末残高と当期首残高が一致しなくてもよいという会計慣行は存在しなかったため、計算書類の承認のために定時株主総会に手続的瑕疵があった場合は、いわゆるチッソ事件(昭和55(オ)17 最判昭和58年6月7日)からすると、瑕疵の連鎖によって、過去の一事業年度に誤謬が存することにより計算書類が不確定となると、その影響を受けるその後の事業年度に係る計算書類もすべて不確定となるため、当該過去の事業年度及びその後のすべての事業年度の計算書類の確定手続きを改めて行う必要があると考えられていました。

しかしながら、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」では、表示される最も古い財務諸表の期首残高で調整が行われるため、単年開示の計算書類にあっては当事業年度の計算書類の期首残高が修正されることになります。この場合、前事業年度の計算書類の期末残高と当事業年度の期首残高が一致しないということになります。

このように前期末残高=当期首残高という関係が断絶することが許容される新たな会計慣行が成立したため、当事業年度の計算書類を過年度の計算書類の確定手続きと切り離して、単独で確定する選択肢が新たにできたと考えることができます(「過年度遡及修正の会計・法務・税務(新日本有限責任監査法人等 著)」。

以上から、当事業年度の計算書類については、過去の誤謬を期首残高で調整すればよく、当該修正が行われた以降の事業年度の計算書類は過去の誤謬に関係なく確定させることが可能となります。

<過年度の計算書類における対応>

では、誤謬が含まれている過去の計算書類はどうなるのかが問題となります。この点を考えるにあたり、まず会社法的には、計算書類は適法に確定しているか重要な誤謬のため確定していないかのいずれかの状態にあると考えるという点を理解しておく必要があります。

つまり、重要な誤謬が含まれていたとしても株主総会等で承認されていれば過年度の計算書類は確定しており修正手続きとして総会の承認が必要と考えてしまいそうですが、会社法上はそのような考え方はしないという点に注意が必要です。

したがって、過去の計算書類が重要な誤謬によって確定していないと判断されるのであれば、株主総会等の承認や監査などの会社法が要求する確定手続きが必要となりますが、逆に過年度の計算書類が確定していると判断される場合は会社法上、特段の手続きは不要ということになります。

だとすると、結局のところ計算書類の確定を妨げる程度の会社法における誤謬の重要性をどのように判断すべきかということが重要となりますが、この点については、「裁判例も乏しく、具体的かつ明確な判断基準は存在しない。」(「「過年度遡及修正の会計・法務・税務(新日本有限責任監査法人等 著)」ということで、個別具体的に判断することになるというしかないようです。

会社法の計算書類を修正再表示すべきかどうかの重要性(つまり、会計基準適用における重要性)については、会社法も金商法も同じレベルで判断すべきと考えられます。
一方で、会社法上、計算書類が確定しているか未確定であるかを判断する際の重要性は、分配可能利益算定の基礎となる等、会社法の計算書類独自の機能を有しているため会計基準適用における重要性や金商法における重要性とも異なる可能性があります。

以上のようにかなり曖昧なので、外部株主がいない公開準備会社のように総会決議等をとることにあまり手間がかからないのであれば総会等で承認していまい、総会等に諮りたくない場合は会社法上、過年度の計算書類が確定していないというほどの重要な誤謬ではないと言ってがんばるということになるのではないかと思います。

例えば、会計上修正再表示が必要と判断されるレベルの誤謬であっても、それを修正しても過年度の分配可能利益がマイナスになることはなく、新株発行等で損害を被った関係者がいなければ会社法上の確定手続きは不要となるのではないかと思います。

過年度遡及修正と内部統制監査や税法との関係も気になりますが、これらについては次回以降にします。

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