出張手当と所得税・消費税の関係
就業規則等の定めに従って出張手当が支給される場合、出張手当と所得税や消費税の関係がどうなっているのかが今回のテーマです。
1.源泉所得の対象となるか
まず出張手当が、給与等として源泉徴収の対象となるかですが、基本的には出張手当は出張に伴う実費弁償の性質のため、は非課税として源泉徴収の対象にはならないものとされています。
「通常必要と認められる範囲のもの」とは何かですが、以下の事項を勘案して判定することになります(所得税基本通達9-3)
①その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人のすべてを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
②その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。
それでは同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額がいくらなのかということになりますが、感覚的には一般従業員の宿泊を伴う国内出張手当で4000円位までが一般的といえる水準ではないかと思います。海外出張手当だとチップがあったりするので、もう少し高い水準にすることも一定の合理性があるものと考えられます。
参考までに「所得税基本通達9-3」を以下に転載しておきます。
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<所得税基本通達9-3>
「法第9条第1項第4号の規定により非課税とされる金品は、同号に規定する旅行をした者に対して使用者等からその旅行に必要な運賃、宿泊料、移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品をいうのであるが、当該範囲内の金品に該当するかどうかの判定に当たっては、次に掲げる事項を勘案するものとする。
(1) その支給額が、その支給をする使用者等の役員及び使用人のすべてを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
(2) その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。
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なお、「通常必要と認められる範囲」を超える部分については、給与所得等として源泉徴収の対象となります。
2.消費税法上課税仕入と認められるか
結論としては、国内出張に対する出張手当は課税仕入として取り扱うことができます。消費税法基本通達11-2-1では「(前略)事業者がその使用人等又はその退職者等に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして取り扱う」とされています。
ただし、「通常必要であると認められる部分」であることが必要であり、この判定については消費税基本通達11-2-1の注1で「「その旅行について通常必要であると認められる部分の金額」の範囲については、所基通9-3《非課税とされる旅費の範囲》の例により判定する。」とされていますので、源泉徴収の対象とならない部分は課税仕入として取り扱うことができるということになるといえます。
なお、消費税基本通達11-2-1の注2において「海外出張のために支給する旅費、宿泊費及び日当等は、原則として課税仕入れに係る支払対価に該当しない」とされている点は注意が必要です。
上記のとおり、出張手当は一定範囲であれば源泉徴収の対象とならないため従業員にとっては満額受け取ることができ、会社としても課税仕入として取り扱うことができるため、出張手当で節税しようとするケースもあるようです。
確かにそのような方法もあるとは言えますが、出張すること自体が目的となってしまっては意味がありませんし、出張手当以外の宿泊費や交通費も必要となる点を考慮すると、テレビ会議等を使用することを検討したほうが業務効率も上がるのではないかと思います。
テレビ会議システムについては、設備投資が大変そうに思いますが、最近ではASP型のサービス(例えばV-CUBE社が提供するnice to meet you)を使用すれば、月額8万円程度でシステムの利用が可能となっています。
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