「福島原発メルトダウン」を読んで
原発の各種発表については本当のところどうなのかよくわからないので、「福島原発メルトダウン」(広瀬隆著)という書籍を読んでみました。
タイトルから今回の福島原発の事故について詳細な内容が述べられているのかと思いましたが、直接的に関連する部分は一部です。
ですが、興味深いことはいくつか書かれていました(すでに別のところでも言われており耳にしていることも多いですが・・)。
まず、津波の高さ(14m以上) については「想定外」というのは嘘だとし、1896年の明治三陸地震では38.2mの津波を記録しており、1993年の北海道南西沖地震でも30mを超える津波が奥尻島を襲っていると紹介されています。
東京電力が対策を講じていた津波の高さは5.5mだったということで、「東京電力が故意に想定しなかっただけ」と断じていますが、この点についてはなぜ5.5mで想定していたかという点、あるいは見直しについての検討状況がどのような状況にあったのかについては明らかにされるべきだと感じます。
次に今回の地震は最終的にマグニチュード9.0とされていますが、これが真実かという点についても触れられています。筆者いわく、地震・地質学者の島村英紀氏は「今回の地震のマグニチュード9.0というのは気象庁がそもそも「マグニチュードの物差し」を勝手に変えてしまったから、こんな前代未聞の数字になったのだ」と指摘していると紹介しています。
従来は「気象庁マグニチュード」というものが採用されており、この方式で計算すると大きくても8.3か8.4とのことで、日本では学者くらいしか使っていないモーメントマグニチュードで気象庁が再計算を行った結果9.0になったとされています。
何故そんなことをするのかについては、当初のマグニチュード8.4だと、今回の地震が想定内ということになり東京電力、政府、専門家などが責任追及されるのを回避するためだとしています。
マグニチュードの計算方式が本当に今回から変更されているのであれば、それは広く明らかにされるべきで、従来ベースでのマグニチュードについて検討される必要があると考えられます。
最後に、原発がなければ停電するかという観点で、簡単に言えば天然ガス火力(稼働率が5~6割に抑えられている)や石油火力(稼働率1~2割)を稼働させれば発電能力は間に合うと紹介しています。
この点についてはCO2排出との関係で検討がより詳細な検討が必要だと思いますが、このほか「独立系発電事業者」という存在については、そんなものがあるのかと初めて知りました。
この事業者は、新日鉄製鉄、日立製作所、出光興産、宇部興産等々の日本を代表する大企業で、独立系発電事業者の電力事業に対する潜在的な規模は2135万~3495万キロワット、将来の制度を改革すれば3800万~5200万キロワットに達する見込みとのことです。
この将来の制度改革というのは、電力会社による送電線の独占を辞めさせること、いわゆる発電と送電の分離とのことです。
話題のスマートグリットを進めていくうえでも、やはり発電と送電の分離をしっかりと議論していく必要があると思いました。
日々成長