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IFRSによる有価証券報告書ー住友商事

IFRSの適用が先に延びることが明らかになったばかりですが、従来米国基準で有価証券報告書を作成していた住友商事がIFRSによる有価証券報告書を2011年6月24日に提出しました。
米国基準で有価証券報告書を作成していた会社で最初のIFRSによる有価証券報告書の提出ということで、HOYAと並びこれからIFRSへの切り替えを行う企業にとって参考になりそうな事例です。

米国基準からIFRSへの切り替えなので比較的スムーズにいったというようなイメージを抱かれるかもしれませんが、実際のところは監査法人から会計士が相当数出向のような形で作業を行っていたようです。

実際、連結財務諸表の注記の36「IFRSへの移行による開示」で米国基準からIFRSへの移行時(2009年4月1日)の影響として開示されている金額は資産合計で476億円(資産減少)となっています。もっとも、米国基準ベースの資産合計が約7兆円なので、割合で考えれば0.6%程度の影響にとどまります。

また、注記の36「IFRSへの移行による開示」にはIFRS1号の免除規定を適用した項目についての記載もあります。
今回はこのうち、以下の従業員給付の部分について確認します。
(住友商事:2011年3月期有価証券報告書より)

IFRSの初度適用については、利用者の便益を上回るようなコストの負担を企業に強いることがないようにということで、IFRS1号において初度適用の規定が定められています。
退職給付についてはIFRS1号のD10およびD11で以下のように定められています。

———————————————————————————–
D10  IAS第19号「従業員給付」によれば,企業は一部の数理計算上の差異を未認識のままにしておく「回廊」アプローチの使用を選択できる。このアプローチを遡及適用すると,企業は,当該制度の開始日からIFRS移行日までの数理計算上の差異の累積額を,認識済みの部分と未認識の部分とに分解することが必要となる。しかし,初度適用企業は,その後の数理計算上の差異について回廊アプローチを適用する場合であっても,数理計算上の差異の累積額の全額をIFRS移行日時点で認識することを選択してよい。初度適用企業がこの選択を用いる場合には,すべての制度について適用しなければならない。

D11  企業は,IAS第19号第120A項(p)で求められている金額は,IFRS移行日から将来に向けて各会計期間について算定されることになるので,当該金額を開示することができる。
————————————————————————————-

上記で太字にしたところが免除規定に該当します。要は、IFRS移行日時点でIAS19号に従った年金債務の計算を行い、従来適用していた会計基準で計算した年金資産および退職給付債務の合計金額との差異を、IFRS移行日に全額期首剰余金として認識し、回廊アプローチを将来に向かってのみ適用することができるということになります。

前述の住友商事の記載はこの処理を採用したということです。

なお、退職給付については、IAS19号の改正作業がすすんでおり、昨年(2010年)4月に公開草案が公表され、2010年9月までコメントの募集が行われていました。当初の予定では今年(2011年)中に最終の取り纏めがなされ、2013年から新基準の適用が目標とされています。
公開草案では、以下のように従来の遅延認識を認めず、従来のいわゆる未認識項目の変動を「その他包括利益」に計上することを要求しています。
(2010年4月公表公開草案の一部抜粋)

未認識項目が多額の会社にとっては、その他包括利益に大きなマイナスが加わるため影響が大きいとして、一時期経済紙等でたびたび取り上げられていましたが、最近ではあまりその手の記事を見かけなくなりました。

IAS19号改正後は、初度適用時に利益剰余金ではなくその他包括利益で調整を行うことになるのではないかと思いますが、今後の動向に注意しておきたいと思います。


日々成長。

 

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