いったいいくらもらえるの?-遺族年金(その2)
前回のエントリで遺族基礎年金について書いたので、今回は遺族厚生年金についてです。
前回同様、普通の会社員で厚生年金に加入しているという前提です。公務員の方などは共済に加入されているとおもいますが、共済にも遺族共済年金という制度があり、厚生年金分に加え職域分があるため支給額は遺族厚生年金よりも大きくなるはずです。
なお、以下の表現は理解を優先するため厳密な表現ではない部分もある点にご留意ください。
<そもそも誰がもらえる可能性があるのか>
わかりやすいイメージとして遺族基礎年金は、高校生までの子を養育している妻のみが受給できる可能性がありました。
これに対して遺族厚生年金は、受給できる可能性のある人が多くなります。受給できる可能性があるのは、被保険者の死亡時に生計維持関係にあった以下の者で①から④へ優先順位が低くなります。つまり、配偶者も子もいなければ父母以下が受給できる可能性があるという意味です。
①配偶者または子
②父母
③孫
④祖父母
遺族厚生年金との違いは、受給できる可能性がある対象者の範囲が広いことに加え、第1順位が「配偶者」である点です。つまり、前回のエントリで例にした妻が稼ぎ頭(厚生年金の加入者)で、夫が専業主夫(国民年金の加入者)の場合に妻が死亡した場合は、遺族基礎年金は受給できませんが、遺族厚生年金は受給できる可能性があります。
ただし、受給者が夫の場合は年齢に要件があって、上記の場合であれば妻の死亡時に夫が55歳以上である必要があり、かつ年金の支給額は60歳からになります。
配偶者でも妻の場合は基本的に年齢の要件はありません。そして、遺族厚生年金の場合、年齢の要件がないのは妻だけです。ただし、30歳未満の子のない妻の場合は、支給期間が5年間のみとなる点は注意が必要です。
夫については上記のとおりなので、受給可能性がある他の者の年齢要件を記載しておくと以下のようになっています。
(1)子、孫・・・被保険者の死亡時に基本的に18歳の年度末まで(一定の場合は20歳になるまで)であること
(2)父母、祖父母・・・被保険者の死亡時に55歳以上であること。夫と同様に支給は60歳からとなります。
なお、遺族厚生年金の場合、配偶者と子は同順位ですが、配偶者も子もいる場合は原則として配偶者が受給することになります。
<どれくらいもらえるのか?>
遺族基礎年金は、子どもの人数によって一律に金額が決まっていましたが、遺族厚生年金の場合は、納めた保険料の額によって受給額が異なります。つまり、給料が高く、今までたくさん保険料を支払っていた人はそれだけ多く給付を受けることができるということになります。
基本的な計算式は以下のようになっています。
上記の計算をするためには「平均標準報酬月額」および「平均標準報酬額」がわからないとなりませんが、ねんきん定期便に「老齢厚生年金の見込額を計算します」という部分にいままでの加入実績による額が計算されているのでその金額を使用することができます。
注意点としては、加入期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算することができるという点です。
計算してみればわかりますが、30歳前後で上記の計算式で額を計算するとびっくりするくらい少ない金額になってしまいますが、300月とするとそれなりの金額となります。
あまり細かいことを書くとわかりずらくなると思いますが、念のため書いておくと加入期間は国民年金の加入期間で判断されます。前回も書きましたが、基本的に厚生年金に加入しているということは国民年金に加入していることになります。
例えば、20歳から46歳まで自営業を営んでおり、国民年金にのみ加入していた人が、47歳から会社員となって不幸にも48歳で亡くなったような場合には、300月のみなしは使用することができません。
もちろん受給権者がいれば遺族厚生年金を受給できますが、この場合は、1年間納付した厚生年金保険料に対して計算される年金額となります。
ちなみに、平成15年3月までの期間とそれ以降の期間がある場合で、加入期間が300月未満の場合にどのように金額を計算するかですが以下のように計算することになります。
(平均標準報酬月額×7.125/1000×被保険者期間の月数+平均標準報酬月 ×5.481/1000×被保険者期間の月数)÷被保険者期間合計×300月
ちなみに、遺族厚生年金の金額の計算には現時点で特例があって、上記の計算式と以下の計算式で計算した金額で大きいほうの金額とされていますが、基本的には上記の式が原則なので、保険加入時に考える場合には上記の額で概算額を計算すれば十分だと思います。
長くなったので今回はここまでにします。
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