決算賞与の損金算入―賃金規程にも注意!
近年は不景気なのであまりないのかもしれませんが業績が良かった場合など、会社が従業員に対して決算賞与を支給することがあります。
税務面を考慮して、決算月に支給まで完了させてしまうケースも多いと思いますが、一方で未払金計上して損金算入するケースもあります。
この損金算入するための要件は、比較的認知されていると思いますが、ポイントとしては以下のような説明がされているケースが多いように思います。
①同時期に支給を受けるすべての使用人に、各人別に支給額を通知していること
②決算日の翌日から1か月以内に支払っていること
③通知した日の属する期間で損金経理していること
上記のとおり、損金算入が認められる要件として各人別に通知することが必要とされていますので、税務上損金算入が認められるためにはきちんと通知をする必要があります。
したがって、仮に税務調査が入ったような場合には、この通知の有無がポイントとなるのできちんと書面で履歴を残しておくことが望ましいと考えられます。
ところが、
中小企業では余計な処理が増えるのを避けるため口頭で通知しているケースもあり得ます。あるいは、極端なケースでは通知をしたことにしているということもあるかもしれません。
そこで、仮に税務調査が入った時に、口頭で通知したという言い訳が認められるのかが問題となります。
この「通知」の方法については、法人税法等では特に方法が定められていないようです。だとすると、民法の考え方からすれば、意思表示は口頭でも効力が生じるので口頭でも問題ないという理屈は成り立つと考えられます。
損金算入するという利益を会社が享受する以上、通知があったことを会社が証明しなければなりませんが、適当に従業員を連れてきて、X月X日に口頭で金額等を通知されていると証言してもらえればいいだけです。
ただし、現実問題として、決算賞与の金額を口頭で各人別に知らせるくらいなら何らかの書面(あるいはe-mail)くらいはあるのが自然なので、本当に口頭で通知を行っていたとしても印象はあまりよくないでしょう。
実際に税務調査があった会社では、通知の有無については触れられず、賃金規程を確認されたというケースもあります。賃金規程で何を確認したのかというと、特別賞与について支給対象者がどう定められているかという点です。
多くの会社において、定期賞与については、支給日現在の在職者に支給されることが定められていると考えられますが、特別賞与についても同様の取扱いになっていると未払計上されていても損金算入が認められません。
つまり、法人税法基本通達9-2-43において、法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、ここでいう「通知」には該当しないとされているため、決算日現在の在職者に対して支給されるものでなければならないということになります。
例えば、決算時に100名に対して未払を計上し、翌月20日に支給しようとしていたところ、うち1名が退職し、退職したからといって支払いが行われていない場合には、残りの99名分も含めて損金算入が認められないことになってしまうので注意が必要です。
また、そもそも決算賞与について賃金規程に明確に定められていない場合には、定期賞与の部分の規程から、ねちねち言われてしまう可能性があるので賃金規程についてもよく確認しておく必要があります。
日々成長。