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連結納税(その3)-導入のメリット(税額控除)

連結納税(その2)-連結納税を導入するメリットは?」から少し期間が空いてしまいましたが、前回の続きです。連結納税のメリットについて途中で終わってしまったので、今回はその続きとなります。

連結納税のメリットについて確認しておくと以下のようものがあります。前回(1)および(2)については記載したので、今回は(3)以下についてです。

(1)連結グループ内の損益通算が可能

(2)繰越欠損金を早期に解消できる可能性がある
(3)税額控除額が大きくなる可能性がある
(4)寄付金の損金不算入額等の課税所得の調整額が有利になる可能性がある
(5)繰延税金資産の計上額もより多く認められる可能性がある

(3)税額控除額が大きくなる可能性がある

税額控除には、試験研究費の税額控除、外国税額控除などがありますが、これらの税額控除額が連結納税を採用した場合には単体課税の場合よりも大きく計算される可能性があります。なお、可能性があるだけで、必ずしも有利になるとは限らない点に注意が必要です。

①試験研究費の税額控除

試験研究費の税額控除についての詳細についてはここでは触れませんが、簡単に言えば、試験研究行った場合に法人税額の特別控除が適用され、企業が負担した試験研究費のうち一定額を法人税額から控除できる制度(租税特別措置法42条の4)です。

したがって、例えば設立したばかりの100%子会社で法人税額が発生していないのに多額の試験研究費が発生しても試験研究費の特別控除枠を有効に活用することはできません。

この場合、連結親法人あるいは他の子会社で課税所得が十分に発生しているのであれば連結納税を選択することによって試験研究費の特別控除枠を有効に活用することができることになります。

簡単な例で確認すると以下のようになります。

なお、試験研究費の控除限度額は原則法人税額の20%ですが、平成21年4月1日から平成23年6月30日までの間に開始する各事業年度においては、30%相当額とされています。また、試験研究費の10%の税額控除が可能とします。

上記の例を少し変更して、連結親法人でも相当金額の試験研究費が発生しているとした場合の例を考えると以下のようになります。結果的には損益通算の影響により連結納税の方が有利ということになっていますが、試験研究費の税額控除だけで考えると、むしろ全体の課税所得が減少していることにより控除限度額も減少し、単体課税の方が有利という結論になります。さらに、連結子法人の課税所得がプラスであるとすると損益通算の効果もなくなるので連結納税したほうが不利ということになります。

上したがって、短期間のうちに子法人の所得がプラスになることが見込まれているのか、連結親法人の試験研究費の水準は今後どうなることが見込まれるのか等を勘案して連結納税を選択するか否かを判断する必要があると考えられます。

②外国税額控除

外国税額控除についても簡単に確認しておきます。外国税額控除については海外支店をイメージするのがいいと思います。

なお、海外子会社の間接税額控除は平成21年税制改正による受取配当金の益金不算入にあわせて、経過措置期間経過後に廃止されることになっています。経過措置期間は3年(平成21年4月1日から3年を経過する日以前開始事業年度)なので、3月決算の場合は今年度末までということになります。

内国法人については、その所得の源泉地が国内であるか国外であるかを問わず、すべての所得に対し課税することとされている一方、所得の源泉地が国外である場合は源泉地国で課税されているのが一般的です。
この二重課税を排除するため認められているのが外国税額控除です。

このような制度があるものの、外国税額を控除するだけの法人税が生じていない法人の場合は外国税額控除制度を活用することができないことになってしまいます。

また、一般的には税額控除方式をとった方が有利と言われていますが、外国税額損金算入方式も認められています。しかしながら、この場合であっても、十分な課税所得の発生が見込まれない場合には最終的に繰越欠損金として切り捨てられてしまいます。

なお、国税庁HPの連結納税Q&Aの「外国税額控除の選択適用」において、連結グループの各連結法人ごとに「税額控除方式」と「損金算入方式」を選択して適用をすることは認められないとされている点注意が必要です。

外国税額控除の細かい点は別の機会に譲りますが、基本的には「法人税額×(国外所得金額/全世界所得金額)」が控除される税額になります。一点だけ書いておくと、国外所得金額については最大で全世界所得金額の90%とされています。

したがって、外国税額控除を適用する所得が発生していない法人があるような場合には、その法人の法人税額が上記算式の「法人税額」に含まれることになるので、控除限度額が大きく計算されることになり、全体の法人税額を減少させることができる可能性があるということになります。

③所得税額控除

所得税額控除については単体課税でも控除できない分は還付が受けられるので、メリットとは言えないと思いますが、一応税額控除に関連しているので記載しておきます。そのため所得税額控除についても詳細は別の機会とし、ここでは簡単に述べるにとどめます。

所得税額控除の控除額の計算方法には、原則法(個別法)と簡便法(銘柄簡便法)があります。まず、連結納税を採用する場合には、連結納税グループ全体でどちらかの方法に統一しなければなりません。

詳細には触れないといいつつ、さすがにどんな方法で計算されるかイメージできないとわけがわからないと思いますので、原則法の計算式を国税庁のHPから抜粋すると以下のようになっています。

同様に簡便法の計算式は以下のようになっています。

連結納税を採用した場合で個別法を採用した場合で、連結納税法人間で譲渡があったような場合、上記の算式で「所有していた期間」が譲渡前後の法人で通算できるということになっています。

一方で簡便法を採用した場合、「利子配当等の計算の基礎となった期間の開始時に所有していた元本の数」および「利子配当等の計算の基礎となった期間の終了時に所有していた元本の数」は連結納税グループ全体合計で計算されることになります。

遅々として進みませんが、長くなってしまったのでここまでにします。

日々成長。

 

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